出版業界において取次店は重要な役割を果たしています。しかし、業界外の方にはあまり知られておらず、何をしているのかよくわからない人が多いでしょう。本記事では取次店の仕事内容や意味などについて説明します。

取次店とは

取次店(とりつぎてん)とは出版社と書店を仲介する存在です。出版業界の取次店を出版取次(しゅっぱんとりつぎ)とも呼びます。
出版業界における卸業者や流通業者の役割であり、同様の存在は他の業界にも存在します。出版業界において書店が取り扱う商品の種類は他の業界よりも多いため、取次店の存在は重要です。

日本の出版業界は出版社や書店の負担やリスクを軽減するため、取次店が主導し出版物が流通する体制を整えています。取次店は出版社と書店の取引を仲介し、配本や返品の管理を行い、代金回収も一手に引き受けているのが特徴です。再販制度や委託販売制度など日本の出版業界特有の制度を維持するのに取次店は重要な役割を果たしています。

取次店の役割

取次店は具体的にどのような役割を果たしているのか紹介します。

書店への流通

取次店は出版社から書店への出版物流通を仲介する役割を果たしています。出版社が直接全国の書店と契約をして配本するのはとても手間がかかるため、取次店の存在は重要です。

取次店は各書店にどの本を何冊配本するのかを決めています。取次店は長年蓄積してきた膨大なデータがあり、どの書店にどの本を何冊配本するのが適切なのか判断できるからです。たとえば、ビジネス街にある書店であればビジネス本の売上が高くなるというデータがあるため、ビジネス本を多く配本します。

代金・返本の受け渡し

書店で本が売れた代金は取次店が回収して出版社に送ります。また、書店で売れ残った本を返本する際の受け渡しも取次店が仲介するのが特徴です。代金や返本の受け渡しを取次店が一手に引き受けて仲介することで、日本の本の流通はスムーズになっています。

配布本の管理

取次店は配布本の管理を行います。倉庫に保管されている本を管理して、必要に応じて各書店への配本や出版社への返本などの対応をするのが特徴です。膨大な数の配布本が出版社から送られてくるため、取次店が適切に管理することが重要になります。

金融的側面

現在の取次店は、書店や出版社の資金繰りを支える役割も担っています。委託配本というシステム上、実際に本が売れ、出版社に売り上げが入るまでには非常に長い期間を要します。このため、売上の見込みから売上相当額の一部を前払いする仕組みなども保有しています。(この仕組みを使う出版社、書店もあれば、使わない出版社、書店もあります。また使う際の条件等も各社異なると言われています。)

取次店で働くには

出版業界の仕事で特別な資格や経験を求められることはありません。取次店においてもおおよそ同一です。求人では、学歴大卒以上が求められることが多いですが、中には高卒以上を条件に募集している場合もあります。

他の企業と同様に、新卒・中途ともに募集があります。各社採用ページや求人ポータルサイトから応募する経路が一般的です。

大手の出版取次は多くの子会社を抱えています。募集に出る職種も多様で、書店へのコンサルティング、営業から倉庫内業務など多岐に渡ります。
また、出版取次がアルバイトを募集しているケースも多いです。特に物流系の業務で多く、庫内業務の経験があれば、採用でも有利になるでしょう。

近年の出版業界と取次店について

出版業界は全体的に売上が右肩下がりの状況が続いています。その中で取次店が不要なのではないかという声が高まっています。

(当サイトは取次店の存在は重要であるとの立場です。)

取次店を介して全国の書店に本を委託販売し、売れなかった本が出版社に返本されるシステムはさまざまな問題があります。返本率が高まっており、コストがかかり、書店と取次店の双方の収益を圧迫しているからです。そのため、出版社と書店が直接契約を結び取引する方法や返本自由な委託ではなく、買い切る形態などを模索する動くも多くなってきました。

出版社と書店が直接取引をする場合は、書店は書籍を買い切りで仕入れるのが特徴です。買い切りの場合は、自由に本の価格を変更できるメリットもありますが、不良在庫になるリスクを考えると、全ての本で実現できるかは難しいでしょう。

時代に合わせた電子書籍取次店

出版取次の存在意義が問われている中で、時代に合わせて電子書籍の取次に対応する取次店が生まれてきました。
出版社と電子書籍書店(Amazon kindleや楽天coboなど)の仲介をするのが電子書籍取次です。通常の出版取次との違いは、物理的な商品の送返品や在庫管理が役割にない点です。

現状は、多くの出版社が出資する業務代行会社的な役割や、独自の配信スタンドと組み合わせた会社が中心です。

一般書店と比較し、電子書籍の配信スタンド数は数も限られ、ファイルフォーマットにも差分が少ないことから、規模の大きな電子書籍特化の取次店は生まれないであろうとの見立てです。

まとめ

出版業界で出版社と書店の仲介をするのが取次店です。近年は返本率が高まっており、出版業界全体の売上が落ちていることから、取次店の存在には注目が集まっています。電子書籍取次など新しい役割が生まれている点も注目です。