「自費出版をする予定があるけど、何か気をつけることはあるだろうか?」
「自費出版における詐欺の予防策を知りたい。」
自費出版を検討している人の中には、こうした疑問が頭に浮かんでいるかもしれません。今回は自費出版における詐欺事例・予防策について触れていきます。
しっかり読み込んでいけば、未然に詐欺を防ぐことに繋がるかと思います
出版詐欺の事例
まずは、実際に起こった出版詐欺の事例を三つご紹介していきます。
X社の事例
X社は自費出版や共同出版を中心に展開している大手の会社でした。
そのX社と出版契約を結んでいた4人が、虚偽の説明により出版費用をだまし取られたとして、損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こしました。
訴状の内容によると、広告上で「出版された本は全国津々浦々の書店で売り出す体制が整っている」などと表現し、出版契約を果たせば全国の書店で販売されると信じ込ませたといいます。その上、1冊たりとも店頭に並ばない可能性があるにもかかわらず、意図的にこの事実を言わないで「自著が書店の店頭に並ぶ」と誤信させたといいます。
事実として500部を出版した原告のケースでは、出版から約二か月後で、12店舗に28冊しか並ばず、800部出版した他の原告のケースでは、出版の約一か月後で10店舗に44冊しか並んでいなかったそうです。その上、書籍はX社の直営店に並ぶだけで、広告掲載以外には、書店に一方的に紹介文を送るという営業活動しかおこなっていなかったとされています。
このX社は共同出版が盛り上がったことに目を付け、飛躍的に出版点数を増やし、2005年には出版点数で業界一位となりました。多くの書籍を発行していく中で、それと共に著者とのトラブルも増加していきました。
その結果、多くの著者からの苦情や訴状問題まで発生していったこともあり、2008年に経営破綻しました。
このケースはX社が意図的に誤認誘導をした悪質な事例とされています。これらの対策に関しては次の章(予防策)で詳しく解説していきます。
Y社の場合
Aさんは、仕事の片手間で小説を執筆していました。小説が完成したので一つの選択肢として自費出版で本を出そうと考えました。
ある時にネットでY社が主催する小説の新人賞があることを発見します。その新人賞で大賞を取ると作品を出版してくれると知ったAさんはまず自費出版を検討する前に、こちらに出して結果を見てから考えようと、この新人賞に応募します。
結果的にはAさんの作品は大賞を取れませんでした。数日後にY社から「あなたの作品は良い作品なのでぜひ書籍を出版しましょう。自費出版だと多額の金額が必要ですが、共同出版で出せば費用は半額です。」と電話で勧められました。
全国に協力している直営店があり、まずはそこに本を置くと説明を受け、制作費として約150万円を支払いました。
500冊の契約で、印刷した本の一部は受け取ったのですが、残本がどこにあるのかが確認できませんでした。残りの本を受け取りたいと話すとY社は、150万円とは別途で費用がかかると言われ、納得できませんでした。
Y社に不信感を持ったAさんはその後、法律の専門家に相談することを決め、解決の糸口を探したといいます。
Z社の場合
自費出版に関する広告を見て、Z社に問い合わせをしたBさん。すると、「一度お話ししましょう」ということでBさんはZ社を訪れました。
そこで「とにかく名前を記入してから話を進めていきましょう」と言われ、ある書面を出されたと言います。Bさんは「自宅に持ち帰り、そこでじっくり考えてから決定したい」と言うと、「今すぐに決めてください」と強面の男性3人に包囲されて、怖くなり契約をしてしましました。
契約金額は約100万円で、その後Bさんは契約してしまったことを悔いました。帰宅後に電話で解約をお願いし、何とか了承されたのですが、数か月後に契約金の半額分を請求されました。
書面には署名・捺印後は半額との記載がされていたのですが、Bさんは署名をしただけで捺印はしていませんでした。
このケースは強引な勧誘を強いられ半ば強制的に契約させられたと言えます。
少し古い手法のように感じられ、今でもこのようなケースがあるのかと疑いたくなりますが、今なおこれに似たケースで被害に遭われている方が多いと言います。
次の章では詐欺に遭わないための予防策について深堀していきたいと思います。
予防策
この章では出版詐欺に遭わないための予防策について解説していきます。これを読めば事前に詐欺対策がインプットでき、いざ自分が自費出版する際の詐欺予防にも繋がることでしょう。
X社の場合の予防策
X社は意図的に誤認誘導を行いました。
自費出版でも商業出版でも、どれだけの部数が配本されるかは取次店の影響を受けます。書店へ配本された書籍についても並べるか並べないか、どの棚に並べるかは書店員の影響を受けます。つまり、日本中の書店のどの位置にどれだけの期間陳列されるかをうたうことそのものを出版社は控えるべきでしょう。
(一部書店に棚を持つ出版社であれば、ある程度の陳列を説明できるケースもありますが、日本中の書店に並ぶとの表現は控えるべきでしょう。)
自費出版だけに言えることだけではありませんが、まず契約内容をしっかり把握し、わからないことは出版社側に質問し、疑問点をクリアにすることに努める必要があるでしょう。
Y社の場合の予防策
Y社のケースは新人賞(コンテスト)開催に付随して発生する事例です。これは著者側が書籍を出版したいという心理に付け込んだ詐欺と言えます。今回のケースでは共同出版という形を取った事例と言えます。落選者や佳作などの大賞を逃した人に対して「自費出版はお金がかかりすぎるから、共同出版で世に出していきましょう。」と勧誘し、高額な契約を結ぶパターンが常套となっています。
これらのケースを予防するにはいくつかのポイントがあります。
まず見積もり金額が他社よりも高い場合はまず、出版社の名前で検索してみることが大事になります。インターネットの情報がすべてとは言えませんが、あまりにもネガティブな情報が載っている出版社の場合、そこで書籍を出版することは改めたほうがよいでしょう。
Z社の場合の予防策
Z社のケースは高圧的に著者にプレッシャーを与え、不当な契約を結ばせるという手法の詐欺です。これは自費出版だけに言えることではなく、あらゆる契約の締結において言えることかもしれません。
このようなZ社のような会社は契約を検討させる時間を与えずに、即決を迫る傾向にあります。また、プロの言うことには間違いないなどと言ったりして、決断を冷静でない環境下で強いるようなケースが非常に多いです。
Z社のケースではまずBさんがZ社を訪れる前に、ネットで検索するなどリサーチするべきだったでしょう。そこでネガティブな情報が載っていれば、契約に署名をすることももちろん、訪問自体もしなかったと思います。Y社のケースでも話しましたが、安易に訪問せず、もしもそうするのであればネットで検索するなどをしたほうが良いでしょう。
まとめ
今回は自費出版の詐欺事例・予防策に関して触れていきました。
これは自費出版をする予定のある人すべてに関係することと言っても大げさではないでしょう。本記事を頭に入れて、被害に遭わないようにしていきましょう。
以上、「自費出版の詐欺事例・予防策」でした。