自費出版をする場合、書籍の販売ルートを理解することが大切です。あまり一般には馴染みのない取次店という会社・流通の仕組みが存在します。本記事では自費出版本が本屋に並ぶまでのルートや取次店の仕組みについて紹介しましょう。

書籍が本屋に並ぶまで

書籍が本屋に並ぶまでの流れは一般的に以下です。

  1. 印刷会社から出版社の倉庫
  2. 出版社の倉庫から取次店
  3. 取次店から本屋の倉庫
  4. 本屋が店舗に陳列

上記のうち一般に馴染みのないものが取次店です。日本の多くの本屋は、出版社ではなく取次店から配本された本を販売しています。

取次店とは出版社と本屋の間に入る流通会社です。取次店は出版社から本を受け取り、全国各地の本屋へと配っています。

取次店の役割

取次店の役割は、書籍の流通です。本屋は安定した仕入れができ、中小出版社は安価な費用で広く書籍を流通させることができます。

日本には委託販売制度が存在しており、ここにおいても取次店が重要な役割を果たしています。

委託販売制度とは本屋が仕入れた書籍のうち、売れ残ったものを返本できる制度です。

発売元に対して売れた分の売上代金と売れなかった書籍を戻します。本屋や取次店は出版社から書籍を預かり販売している構造です。出版社が取次店や本屋に書籍を配本した段階では預けただけであり、この時点では売れていません。

取次店は本屋から出版社への返本も仲介します。取次店は出版社と本屋の間で発生する書籍流通の調整役と言えるでしょう。

補足として、コンビニや大学生協などに並ぶ書籍の流通も取次店が取り持っています。

配本方法の種類

配本方法の種類として委託配本と注文配本をそれぞれ解説します。

委託配本

委託配本とは、出版社が取次店を経由し、本屋に対し書籍の販売を委託する配本方法です。日本の多くの本屋は委託配本された本を販売しています。本屋の特徴や売れ行き等を考慮し、タイトルや配本冊数を取次店が決めるケースが多いです。

委託販売のため、一定期間が過ぎて売れなかった書籍は取次店を経由して出版社へ返却されます。本屋にとっては在庫を抱えるリスクを軽減しながら多くの種類の書籍を販売できるのがメリットです。

委託配本の場合、店頭に書籍を並べるか決めるのは本屋であり、配本されても陳列されずに返品されるケースもあります。

返本が自由にできるのであれば、乱暴な仕入れをされないかと不安に思う方がいるかもしれません。しかし、昨今は物流の2024年問題として語られる通り、物流機能が厳しい状況にあるため、返本率を下げる取り組みがしきりに推進されています。このため、返本が自由であっても希望数の配本が叶わないことも起きており、課題となっています。

注文配本

注文配本とは本屋が取次店に注文をして、書籍を仕入れる方法のことです。

本屋が販売したいと思った書籍を注文します。そのため、委託配本と比較し、通常は注文配本のほうが配本冊数は少なくなるでしょう。

出版社により注文配本の返本取り扱いには差があります。多くの出版社は注文配本分の書籍も自由に返本可能としていると思います。(フリー入帖と呼ばれるものです。)

返本可としても、注文配本の場合は本屋が積極的に販売したい書籍を仕入れる仕組みのため、返本の割合は低くなります。

2種以外に、買い切りの配本方法もあります。その名の通り、返本を認めず買い取ってもらう方法です。主流なものではなく、自費出版本の流通においても採用されることはほぼありません。

自費出版本の流通も取次店が必要?

自費出版本であっても、商業出版と同様に取次店を経由して、本屋へと書籍が流通していきます。日本では取次店を介した流通ルートが確立されており、本屋は取次店経由で配本された本のみを販売するのが一般的です。

(客注分の一部例外もあり)

この仕組みは商品の移動とお金の移動がスムーズであることと、売れ残った在庫を返品でき、本屋にとってリスクを最小にできるメリットがあります。自費出版本もより多く販売したいと考える場合、取次店を経由し本屋へ配本することが望ましいです。

自費出版の取次店費用

自費出版本を取次店経由で配本する場合には、費用がかかります。

取次店費用はおおよそ売上の1割前後です。本屋が売上の20数%を受け取ります。

売れない書籍は書店との往復配送費がかかるため、返本率が高いタイトルの場合、費用の割合はもう少し高くなります。

(補足として、返本された書籍は研磨し再度流通に乗せるか、断裁処理し廃棄します。その過程で倉庫等の保管コストもかかります。研磨や断裁にかかる費用は取次店費用に含まれません。)

本屋により取次店は違い、配本できない場合がある?

取次店は本屋と出版社をつなぐ存在であり、それぞれと契約しています。したがって、取次店が取り次げる範囲は、契約している本屋や企業の範囲内に限定されています。もし特定の本屋で販売して欲しいならば、その本屋の取次店を確認しましょう。(日販・トーハンの2社が取次最大手ですが、ほかにも大手が数社あります。)

出版社、本屋が同じ取次店と契約していることが必要です。

取次店を必要としない販売ルート

取次店を介さない販売ルートについて紹介しましょう。

本屋に直接卸す

本屋に直接営業をかけて自著を販売してもらうように交渉する方法です。少部数を配本するには配送費や決済費用面で合わないため、大量に仕入れてもらう必要があります。

自費出版サービスのオプションによくある「書店営業」は、注文配本を獲得するためのもので、取次店を通しますから、この項で説明したものとは別物です。

通販による流通

Amazonなどのネット通販サイトで自費出版した本を販売する方法があります。

取次店を通さずにAmazonと直接取引する方法と、ご自身でAmazon上に出店する方法があります。(Amazonとの直接取引は、原則出版社のみで個人不可)

ほかにも、出版社が直販サービスを持っている場合、販売をサポートしてくれるケースもあります。通販の場合は地域に関係なく販売できる点がメリットです。

即売会による流通

同人誌即売会などで自費出版した本を販売する方法があります。即売会は全国各地で行われており、幅広い種類のイベントがあるのが特徴です。オールジャンルで参加できるものから特定のジャンルに限定したものまであります。

まとめ

自費出版本が本屋に並ぶまでをご紹介してきました。出版社から取次店に依頼し、取次店から本屋に書籍が配られます。返本の課題はありますが、有効な仕組みとして活用すると良いでしょう。