本の種類として双書・叢書というものがあります。何となくイメージできても、具体的にどういった本かわからない方が多いのではないでしょうか。本記事では双書と叢書の特徴や違い、全集や新書の意味について紹介します。

双書・叢書とは

双書(叢書)とは、「そうしょ」と読み、さまざまな書物を集めて1つの本にまとめたものを指します。同じテーマについて、複数の著者の書物を集めて出版します。双書(叢書)は同一テーマや同一フォーマットで続けて出版されることが多いため、「◯◯シリーズ」と呼ばれることもあります。双書と叢書は漢字が異なりますが意味は同じです。

叢書としてまとめる目的

叢書としてまとめる理由は、一冊で内容が完結するからです。1つのテーマについて一冊で完結するため、複数の本をまたぐ必要がありません。読み手にとっては、読み進めやすくて内容を理解しやすくなります。テーマに関連する情報も1つの本から取得しやすくなっている点もメリットです。

また、叢書はシリーズ化して次々と出版される傾向にあります。(シリーズ化して出される本を叢書と呼ぶケースもあります。)
1つのテーマに関連する書物が多くあり、一冊にまとめることは難しいことからシリーズ化するというわけです。

叢書は終期を決めずに継続的に出版されていきます。そのため、長く続いている叢書のシリーズは多くあります。

叢書と全集の違い

叢書とは関連のあるテーマについて1つの本としてまとめたものです。一方、全集とは同一の著者の作品をまとめたものであり、叢書とは異なります。

叢書は研究や読書の便宜を図るためという目的として、類似テーマの書物から選集された出版物です。一方、全集は個人の著作集であり、叢書とは目的が異なっている点に注意しましょう。

叢書の場合は、特定のテーマについて、数多くの本がある中から抜粋して1つの書物にまとめていきます。一方、全集の場合は基本的に同一著者の全作品を網羅するケースが多いです。

文庫・新書・選書とは

叢書の中には文庫や新書、選書と呼ばれるものがあります。どれも叢書の1つであり、主な違いはサイズです。

文庫とは叢書の中でも小型の書籍を指します。文庫の一般的なサイズはA6版となっていて、並製のために廉価で販売されているのが特徴です。海外におけるペーパーバックと同等の書籍であり、多くの人に手に取ってもらうための普及版の書籍といえます。日本では戦前に古典を普及させる目的で岩波文庫が誕生し、戦後は数々の出版社から文庫が出されました。

新書とは「173x105mm」の新書判の叢書のことです。新書以外にもブックスやノベルズといった名称がよく使われます。新書やブックスは主にノンフィクションを扱い、ノベルズはフィクションを扱うのが特徴です。1938年に誕生した岩波新書から始まり、書き下ろしを中心とした叢書という位置づけでした。現在では多くの出版社が新書の出版に乗り出しており、内容は種々雑多なものが多いです。

選書とは同一の装丁によって出版されている本のシリーズを指します。新書よりも専門性や独自性が高い傾向にあるのが特徴です。多くの選書は四六判並製であり、出版社によって表紙のフォーマットは異なります。現在の選書は大半が書き下ろしであり、中には雑誌連載をまとめたものもあります。選書ではなく叢書や全書といった名称で出版されるケースも多いです。

有名な叢書

叢書の中でも有名なものを以下にまとめました。

  • 岩波ブックレット
  • 岩波講座
  • NHKブックス
  • 人物叢書

岩波ブックレットは1982年に創刊された小冊子のシリーズです。さまざまなテーマで出版されており、500円程度の廉価で販売されています。平和や人権、環境といったテーマが多いです。

岩波講座は1928年に出版されてから歴史の長い叢書のシリーズです。多くの執筆者が協力をして、特定のテーマについて体系的に問題を整理し出版されてきました。たとえば、岩波講座現代思想や岩波講座日本歴史、岩波講座基礎数学といったものがあります。

NHKブックスはNHK出版が1964年から出版している叢書のシリーズです。2014年時点で1,200点を超えており、主に学術的な内容が中心になっています。

人物叢書とは吉川弘文館から刊行されている日本史の人物をテーマとした叢書です。1958年から刊行され、300点を超えています。

まとめ

双書・叢書は1つのテーマについて書物をまとめたものであり、日本では文庫や新書、選書といった形で多数刊行されています。幅広い年齢層の人達が触れており、今後も数多くの双書・叢書が出版されるでしょう。