出版業界は他の業界とは異なる特徴がいくつもあります。出版業界は右肩下がりで衰退すると言われており、出版業界について気になる方は多いのではないでしょうか。本記事では出版業界の特徴や現状、今後の動向などについて紹介します。

出版業界とは

出版業界とは出版物の企画・制作・流通を担う業界を言います。出版業界は出版社と取次店、書店によって構成されています。出版社が出版物を作成し、取次を経由して日本全国の書店に陳列し、消費者に出版物を販売するのが主な流通の流れです。ただし、近年は電子書籍やAmazonの登場によって、出版業界の構造は大きく変化しています。

出版業界の特徴

日本の出版業界独自の特徴として委託販売制度と再販売価格維持制度があります。

委託販売制度とは、出版社が書店に出版物の販売を委託することです。一定期間内であれば、書店は出版物を返品できます。そのため、書店は自由に出版物を仕入れて販売することが可能です。売れる見込みの少ない本であっても、委託販売制度のもとであれば安心して仕入れることができます。

再販売価格制度とは、小売業者(主に書店)が出版物を販売する際の価格を固定する制度のことです。書店は出版社の指定した定価以外で本を販売できません。そのため、日本では全国どこの書店でも同じ本を同じ価格で購入できます。

出版業界の現状と推移(市場規模・書籍部数)

出版業界の売上がピークに達したのは1995年です。また、書籍の売上がピークになったのは1998年でした。

1995年にピークに達してから現在に至るまで出版業界の売上は右肩下がりで低下しています。出版物の売上は1996年に約2兆6,000億円だったのが、2022年は1兆6,305億円になりました。ピーク時と比較すると約6割にまで市場規模が縮小したことになります。

書籍の販売部数はピークである1998年には約9億冊だったのが、2019年には約5億冊になりました。雑誌の販売部数もピーク時の1995年には約38億冊だったのが、2019年には約9億冊にまで減っています。特に雑誌の部数の低下が著しく、現在の雑誌の販売部数は1965年当時と同水準となっています。

出版業界が低迷した原因

出版業界が低迷した原因を簡単に紹介します。

電子書籍の普及

電子書籍が普及して多くの方が気軽に利用するようになりました。電子書籍の流通が発展した結果として紙の本の売上が低迷しています。そのため、特に取次や書店にとっては深刻な状況です。

若者の活字離れ

特に若者を中心として活字離れが進んでおり、本を買う人が減っています。趣味の多様化により、読書に多くの時間を割かない人が増えました。他に魅力的な娯楽が多い中で、あえて読書を選ぶ若者が減ったことで、出版業界は低迷しています。

低所得の影響

不景気の時代が続いたことで給料が少ない人が増えて、新刊を買う人が減っています。逆に、フリマアプリや古本屋などを利用して本を安く入手したいと考えている人が増えていて、出版業界にとっては大きなダメージになっています。古本が買われたとしても出版業界にはまったく利益になりません。所得により新刊を買う余裕のない人が増えたことが、出版業界が低迷する1つの原因といえます。

売上低迷による出版業界への影響

出版物の売上が低迷したことにより、出版社と書店の数が減っています。特に中小出版社の倒産が相次いでおり、M&Aをするケースも珍しくないです。また、書店の廃業も急速に進んでおり、駅前の好立地にある書店でさえも廃業するケースが出てきています。

電子書籍の売上

紙の書籍や雑誌が減っている中で電子書籍の売上は成長を続けています。2011年には電子書籍の売上が651億円だったのが、2020年には4,821億円にまで成長しました。2020年からの巣ごもり需要と鬼滅の刃など漫画作品の大ヒット作が次々と登場し、電子書籍の市場規模の拡大はさらに進んでいます。

電子書籍の売上のほとんどは電子コミックによるものです。2020年には電子コミックの売上が4,002億円に達しました。また、2020年における文芸や実用書などの電子書籍の売上は556億円、電子雑誌の売上は263億円となっています。

電子書籍の売上は今後も増えていくと予測されており、日本の出版業界を支える存在になることが期待されています。

出版社の今後の動向

出版業界は電子書籍の売上が伸びているため、今後は電子書籍の扱いが重要です。紙の本と同時に電子書籍も販売するようにし、電子書籍売上を成長させていくことに注力する出版社も増えるでしょう。

また、Webサービスやアプリなどに力を入れる出版社が増えています。出版社が従来の出版業だけではなく、動画サービスや学習アプリの提供など別の事業に参入するケースも珍しくありません。大手出版社の場合は、既存のコンテンツをアニメや映画、ゲームにすることで権利ビジネスを拡大させています。

今後、出版社のビジネスモデルの転換が進んでいき、ますますデジタル化が推進していくでしょう。

まとめ

出版業界の現状は厳しい状態であり、右肩下がりに売上が低迷しています。ただし、電子書籍の売上は伸びていて、デジタルやWeb方面での需要が高まっているのが現状です。そのため、今後は多くの出版社で電子書籍化やWebサービスの展開などデジタルに力を入れるようになるでしょう。