日本の書店は書籍を買い取り仕入れせず、委託を受けて(預かって)販売しているため、売れ残った書籍は出版社に返送できます。本記事では書店の返送品とは何か、返送の仕組みはどうなのかについて詳しく紹介します。

返送品とは

返送品とは書店から出版社に返される商品のことです。具体的には書店に陳列したが、売れ残った書籍が該当します。
書店は出版社から委託を受けて書籍の販売を行っています。売れた商品のみ、事前に定めた掛け率で仕入れ、売上を立てます。売れなかった商品(書籍)は出版社に返品し、これを返送品と呼びます。

日本では毎日次々と新しい本が出版されています。書店は常に店内の本のラインナップを新鮮な状態に保ちたいため、返送を頻繁に行っているのが現状です。たとえば、雑誌の場合は新しい号が発売されれば、古い号と入れ替えて、古い号は返品します。

返送の流れ

一定期間が経過し、売れなかった本は出版社に返送されます。本の返送は直接出版社へ送るのではなくて、取次を経由するのが一般的です。(書店→取次店→出版社)
ただし、取次の判断で返送を拒否されるケースもあります。

現在はほぼ聞きませんが、返送する際にスリップが必要な場合があります。スリップとは本に挟まっている短冊サイズの紙で、売上カード等と記載されている場合もあります。

返送はいつでもできる?

本の種類ごとに返品期限が定められていて、期限を過ぎると返品できなくなります。

たとえば、雑誌であれば週刊誌は45日、月刊誌は60日など返品期限が定められており、期限内に返品手続きを済ませなければいけません。

また、新刊委託や重版委託の場合は、締め切り日起算で105日が返品期限です。常備委託については通常返品期限は1年とされています。

(仕入れをした日、締め切りの日はそれぞれ異なるため、おおよそ仕入れから4か月程度が新刊の返送期限です。)

注文品や買切品について返品は一切認められていません。書店が出版社から買い切った商品は返品ができない代わりに価格を自由に設定できます。たとえば、買切品でバーゲンセールを行うことも可能です。そのため、今後は書店が出版社から買い切りで本を仕入れるケースが増える可能性があります。

(実態としては、新刊書籍が1年後に返本されることも、注文品が返本されることも業界内では日常的です。「返品了解」と呼ばれる手順があり、返送期限を超えた書籍や注文品であっても、出版社に「返品して良いか?」とFAX等で確認し、了解を得た上で取次店に戻すという手順です。仕入れのタイミングで無条件に返品できるかの了承を得た上で仕入れるケースもあります。)

返送できない場合もある

すべての本の返送が認められているわけではありません。たとえば、返品期限が過ぎている場合は返送が認められないです。また、期限内だったとしても、損壊のある本などは断られます。返送できない本はロス本となり、書店にとっては大きな損失です。

返送できるかどうかを判断するのは取次が行います。取次が認めると、多少破損があったとしても返送は可能です。どのレベルの損壊まで返送を認めるのかは、取次や出版社によって異なります。

フリー入帳とは

フリー入帳とは出版社が書店に対していつでも本の返品を受け付けると約束する取引ルールのことです。ただし、実際に書店が本を返品する際には取次を経由しなければいけません。そして、フリー入帳だったとしても、取次に返品を断られる可能性はあります。

フリー入帳とは契約上の建前であり、絶対的な約束ではありません。取次が返品不可能と判断した場合は、書店に本が逆送されます。取次が返品を受け付けるかどうかの基準は公開されていません。取次によっても判断は異なります。

(中小の出版社の多くは、このフリー入帳です。当サイトを運営する弊社もフリー入帳を原則とする出版社です。ここでは原則のお話を書いていますが、相当な破損等がない限り、出版社としては返送を受け付けます。※取次店の意見が異なる場合もありますが、その意思決定に出版社側は関与できません。)

ここで弊社のスタンスに少し触れますと、ニッチなテーマや専門書等の書籍流通を実現させるには、出版社としてフリー入帳であるべきとの考えです。書店がリスク低く、しっかりと収益を確保できることが出版文化を守る上で重要との立場です。

返送するデメリット

書店が出版社に返送する際には、書店持ちで輸送費がかかる点がデメリットです。(細かくは、取次の独自配送網にのっているか、否かで異なる部分があります。)また、あまりにも返本が多い場合は、次回から新規入荷される本が減らされるリスクがあります。

上記のデメリットがあるため、書店は本をどれくらい入荷するのかしっかりと考えることが大切です。

まとめ

書店は期限内であれば出版社に本を返送できます。ただし、返送が断られることがあり、輸送費もかかるため仕入れは慎重に判断しなければいけません。書店の返品の仕組みについて理解しておきましょう。