書店でよく使われる用語の1つに入帳があります。入帳というと「いりちょう」と読んで収入を記載しておく帳簿の意味で使う方もいるかもしれませんが、出版業界は「にゅうちょう」と読んで別の意味で使用します。本記事では出版業界用語である入帳について、意味や条件などを紹介します。

入帳とは

入帳とは書店が返品した商品や不着品の金額などを取次への支払金額より差し引くことです。取次は送品した商品の金額から返品された商品の金額を差し引いた額を書店に請求します。

日本の出版業界のルールで書店は基本的に本を定価で販売しなければいけません。発売から時間が経ち、旬の過ぎた本も定価のままで販売する必要があるため、書店は売れない可能性の高い本をどんどん返品します。このように入帳は頻繁に行われます。

入帳する際の決まり事

入帳する際には決まり事がいくつか存在します。

入帳締め切り日

書店が取次に返品をして入帳できる日には期限が定められており、入帳締め切り日と呼ばれます。入帳締め切り日までに返品の処理が完了すれば、当期に入帳が可能です。締め切り日を過ぎてしまうと当期分として入帳できず、翌期の入帳として扱わなければいけません。

入帳締め切り日は変更されることがあります。たとえば、2007年にはトーハンが入帳締め切り日を従来よりも5日間短縮しました。短縮したことで、書店での店頭販売の強化を促しています。

入帳不能品は返本できない

書店はすべての商品を返品できるわけではありません。汚損や返品期限切れなどの理由によって返品できない場合があり、これらは入帳不納品や返品不納品と呼ばれています。

返品できなかった商品は売り物にもならないため、書店にとっては損失となっていしまいます。

フリー入帳とは

フリー入帳とは、書店がいつでも出版社に対して商品を返品できるという取引ルールです。いつでも返品ができると書店に伝えれば書店に入荷してもらえる可能性が高まります。フリー入帳であるとアピールすることで、幅広い書店に自社の商品を置いてもうことが可能になります。

ただし、現実的にはフリー入帳は建前です。書店と出版社の間には取次が存在し、返品を認めないケースがあります。出版社は取次と契約をして本を送品し、取次は書店と契約して本を送品するのが流通の流れです。そのため、出版社が自由に返品できると書店に伝えたとしても、最終的な判断は取次が行います。

返本処理の流れ

書店が本を返品したい場合は、取次に本が送品されます。取次が返本を認めたならば、取次を経由して出版社にまで本が送品されて返本が完了です。返本に伴うお金のやり取りや処理は取次が仲介します。

書店が返本した場合は、返本した分の代金は請求されません。返本するためにかかった送料は出版社が負担します。返本される本が増えると出版社は多くのコストが発生するため、返品率が出版社に与える影響は大きくなってきます。

買い切りの場合は入帳できない

入帳は書店が出版社に返本できることを前提としたものです。そのため、買い切りで仕入れた本については、原則として入帳はできません。

日本に流通している本のほとんどは出版社が書店に委託して販売しているものです。しかし、最近は書店が出版社から本を買い切りで仕入れるケースが増えています。

書店が買い切りで仕入れるメリットは自由な価格で販売できる点があげられます。買い切りで仕入れた本は委託販売とは関係ないため、書店は値下げをして販売することが可能です。

まとめ

日本の出版業界では委託販売が主流であり、書店が返本することが認められています。返本をする際に行われる処理が入帳となります。