翻訳スキルのある方や海外の好きな本を日本に広めたい方におすすめできるのが翻訳出版です。それでは翻訳出版を実現するためには具体的に何をすればいいのでしょうか。本記事では翻訳出版の方法について詳しく解説します。

翻訳出版とは

翻訳出版とは海外で発行された外国語で書かれた書籍を翻訳して出版することです。海外で出版された本の中には、まだ日本語に翻訳されていないものが多くあります。そのため、出版社の中には翻訳出版に力を入れている会社があり、翻訳出版された書籍がベストセラーになることも珍しくありません。

翻訳出版の方法としては出版社に翻訳企画を持ち込む方法の他に、自費出版で翻訳した書籍を出版する方法もあります。また、現在では電子書籍によって翻訳出版するケースも増えてきています。

海外の書籍には一定の需要が存在するため、翻訳出版は注目されている分野といえるでしょう。

翻訳出版の流れ

翻訳出版をするには、出版社を経由して刊行するのが一般的です。以下では翻訳出版を実現するまでの主な流れを紹介します。

出版社と打ち合わせ

まずは出版社と翻訳出版の詳細について打ち合わせを行います。打ち合わせは、対象となる原作や想定するスケジュール、自身で翻訳が可能かなど現実的な点について細かく話し合いをするプロセスです。しっかりと打ち合わせを行い、出版社との認識の齟齬が生まれないように注意しましょう。

原作の版元、著者の確認

原作の権利を持っている者が誰なのかを確認することは大切です。版元はどこの出版社か、著者は誰かについて正確な情報を調べます。

原作の版元、著者との契約交渉

原作を勝手に翻訳し出版することはできません。必ず版元や著者の許可をもらう必要があります。原作を出版した出版社に対して問い合わせを行い、版権を取得できるのか交渉しなければいけません。一般的には版権取得を代行するエージェントを挟みます。

原作の出版社や著者の意向によって翻訳が可能かどうかが決まります。交渉が決裂すれば翻訳出版の企画は頓挫するため、事前に情報を集めておくことが大切です。

(多くのエージェントは、翻訳者と日本の出版社間の契約がまとまっていることを交渉の前提にします。そのため、気軽に翻訳権を版元に相談することは現実は難しいです。)

出版条件、費用の確認

翻訳出版の了承を得られたならば、出版条件や費用について確認を行います。翻訳して出版する権利を得るための対価を支払わなければいけません。初版部数に対して著作物利用料を率で支払うのが一般的です。初版の設定が少ないと契約できないケースがあります。また、初版以降の刷り部数に対しても販売部数に応じた著作物利用料を設定するのが一般的です。初版分を含めた刷り部数を計算するのか、実売部数を計算するのかによって詳細は異なります。

さらに、原作の版権を取得するのに利用したエージェントに支払う手数料も発生します。

翻訳出版権の契約

契約内容の詳細を話し合って了承が得られれば、実際に翻訳出版権の契約をします。契約の細かな手続きについては、エージェントや出版社が対応してくれるため、自身で難しい手続きをする必要はありません。ただし、事前に必ず契約の内容を確認しましょう。

翻訳作業

翻訳出版権を取得したならば、実際に翻訳作業を始めます。翻訳出版物の質を決める重要なプロセスになるため、時間をかけて丁寧に翻訳作業を進めていきましょう。

翻訳は原書の内容に忠実かつ正確に行うのが原則です。誤訳をしてしまうと、原書とは異なる主張や印象を与えてしまうことになり、原書の著者からクレームが入る可能性があります。

翻訳作業の質に不安がある場合は、第三者にチェックを依頼することをおすすめします。翻訳会社や翻訳家など専門家へのチェックを出版社側が斡旋してくれるケースもあります。

編集、組版

編集や組版については、一般的な書籍と同じ工程であり、文字組みや図版などの配置を細かく決めていきます。また、同時に翻訳された日本語についての校正作業も進めていきます。編集や組版の作業については出版社側でプロが対応してくれるケースが多いです。

装丁デザイン

本の外観のデザインについても細かく決めていきます。原書のデザインを踏襲するケースもあれば、完全にオリジナルのイメージでデザインするケースもあります。装丁デザインについても、出版社側でプロが対応するのが一般的です。

装丁デザインが完了した時点で原作者にチェックを受けるケースもあります。原作者から意見があれば、それを反映させなければいけません。

印刷、製本

組版や装丁デザインまで完了した後は、実際に印刷・製本を行います。印刷・製本の工程が終われば、本が販売できる状態で完成します。印刷から製本までの工程も出版社が印刷会社などの手配を行い、必要な作業をすべて担当してくれます。

完成品の納品、取次店へ搬入

翻訳出版物は完成後納品され、取次店へと搬入されます。日本では書籍の流通は出版取次を経由するのが一般的です。取次店から各地の書店へと書籍が流通していき、最終的に店頭で販売されます。

発売

翻訳出版の完成品が取次店に搬入されて、所定の書店へ納品されたならば、実際に店頭で書籍が販売されます。出版社に協力してもらい翻訳出版する場合は、出版社の持つ流通ネットワークを活用して各地の書店で書籍の販売が可能です。

最初は初版の書籍のみが発売されて、売れ行きが好調であれば増刷され追加で印刷された書籍が販売されます。

売上集計、原作版元への報告

翻訳出版物の最終的な売上を集計して原作版元に対して報告しなければいけません。売上のうち、あらかじめ契約で決めた率に応じて対価が支払われます。また、翻訳出版をサポートした出版社に対しても費用を支払うことになり、残った金額が翻訳者の取り分です。

弊社でお引き受け可能な内容について

弊社では翻訳出版について、原作の版元・著者との契約交渉から編集・組版、印刷・製本、流通・販売までの内容に対応できます。

主要な言語に対応しています。主な言語は以下の通りです。

  • 英語
  • 中国語
  • スペイン語
  • フランス語
  • ドイツ語
  • ポルトガル語

注意点として翻訳作業については原則として依頼者が行います。そのため、原作を自身でしっかりと翻訳できるスキルを持つことが前提です。

ただし、翻訳作業や翻訳物のチェック作業については、翻訳会社に外注できます。

翻訳出版の費用、相場(内訳別)

翻訳出版権

翻訳出版権については、原作者の国の通貨によって支払うか、米ドルで支払うケースが多いです。そのため、実際に支払う費用については為替による変動があります。翻訳出版権の取得のための費用は20万円~30万円程度が相場です。ただし、海外でベストセラーになっている本については、翻訳出版権が高額になります。

著作物利用料

著作物利用料については日本円をベースに計算し、支払う際に米ドルなどへ換金するのが一般的です。著作物利用料の相場は売上に対して4~9%程度となっています。刷り部数計算では著作物利用料は安くなり、実売部数で計算すると高くなります。

著作物利用料については、初版を印刷したタイミングで一定額を前払いするケースが多いです。アドバンスと呼ばれる制度であり、数千部に相当する印税を前払いで支払います。ただし、契約によってはアドバンスが設定されないケースもあります。

エージェント手数料、出版社手数料

エージェントに対する手数料は安い場合で5~10万円です。出版社から手数料が請求されるケースがあり、弊社含め手数料を取らないか請求しても数万円の会社もあれば、数十万円程度を請求するケースと幅があります。

デザイン、印刷製本

組版やデザイン、印刷製本などにかかる費用は出版社によって大きく変わります。数百部程度の小規模なケースでは30万~150万円、2,000部程度の規模では100万~400万円と幅広いです。

翻訳出版をするには上記のような費用がかかるため、打ち合わせの段階で最終的にトータルでどのくらいの費用が発生するのか確認しましょう。