今後の出版業界に大きな影響を及ぼしていくのが電子書籍です。それでは、電子書籍出版業界はこれからどのように変化していくのでしょうか。本記事では電子書籍出版業界の今後や既存市場への影響について解説します。

電子書籍領域の出版業界、過去と現状

現在、出版業界は右肩下がりの状況が続いていますが、電子書籍領域の売上は逆に伸び続けています。電子書籍の市場規模は2014年から発表されており、最初の年に1,144億円だったのが年々上がり続け、2020年には3,931億円、2021年には4,662億円にまで成長しました。電子書籍は紙の書籍や雑誌の売上と同じ程度にまで伸びており、現在の出版業界を支えている存在といえます。

電子書籍出版業界の今後予想

電子書籍出版業界は今後も伸び続けていくと予想され、数年以内に8000億円程度まで拡大されると言われています。
現在の電子書籍に関しては9割が電子コミックによる売上です。そのため、電子コミック以外の領域も売上を伸ばすことができれば、電子書籍市場はより強く拡大していくことができるでしょう。

また、今後は電子書籍のみ展開のコミックが増える可能性もあります。電子のみの領域でコミックが発達していくことで、新しいコミックの文化が生まれるかもしれません。

電子書籍が伸びることで紙の書籍の市場が縮小するというトレードオフの関係性があるものと多くの業界人が考えています。しかし、一部調査会社やamazonなどのレポートによると否定する報告も挙げられており、今後紙と電子の共存を考える中で、より深い調査が待たれます。

電子書籍が注目される理由

電子書籍が注目される理由をまとめると以下の通りです。

  • 手軽に購入できる
  • コロナ禍による巣ごもり需要
  • スマートフォンやタブレットなどの普及

電子書籍が注目されている大きな理由の1つは手軽に購入できる点です。電子書籍を販売するサイトはネット上に多くあります。画面上で注文すればすぐにダウンロードできるようになり、その場で本を読めるため便利であると評判です。

また、コロナ禍により巣ごもり需要が生じた点も電子書籍の普及に影響しています。コロナ禍で不要不急の外出を控える方が増えたことで、書店へ足を運ぶことを避けるようになりました。そこで、書店に行かなくてもすぐに買うことができる電子書籍が注目されたのです。

スマートフォンやタブレットの普及も電子書籍が売れるようになった理由の1つといえます。全国民にスマートフォンが行き渡ったといっても大げさではない普及率であり、ハードウエアの観点では端末保有ハードルは存在しないと言えるでしょう。

電子書籍に多くのメリットを感じる人が増えているため、電子書籍が注目されています。

アプリによる効果的なプロモーション

電子書籍が人気を集めている理由の1つに漫画アプリのプロモーション効果が挙げられます。
漫画アプリは、電子書籍を選ぶ、決済する、ダウンロードする、閲覧することができるのが特徴です。漫画アプリをスマートフォンなどにインストールすることで、快適に電子コミックを読めるようになります。

漫画アプリの多くは、作品の一部を無料で閲覧できる点をプロモーションしています。興味のある作品を無料で読み、続きが気になれば購入に繋がります。書店で立ち読みをするのと近い感覚だと言えるでしょう。

さまざまな出版社が漫画アプリを展開しています。自社が刊行している週刊少年誌に特化している漫画アプリもあり人気が高いです。

海外における電子書籍の現状

電子書籍は日本だけではなく海外でも人気を集めています。たとえば、アメリカでは2020年に電子書籍の売上が約1,200億円でした。アメリカでは紙の本の需要が引き続き高いことが言えますが、年々電子書籍も読まれるようになっています。

また、中国では2020年における電子書籍の市場規模は約1,500億円です。書籍全体の中で占める電子書籍の売上の割合は約9%程度となっています。まだ電子書籍は中国で大きな市場とはいえないのですが、年々成長を続けているのが特徴です。特にネット文学の分野において作品数が増えており、注目されています。

上記以外にも電子書籍が成長する傾向のある国は多いです。今後数年は世界中で年5%程度の成長率で電子書籍市場が拡大するでしょう。

教育現場における電子書籍の普及

教育現場では新しい試みとして電子書籍の普及が進んでいます。たとえば、高校や大学などでは募集要項やパンフレットの電子化が当たり前になりました。他にも、予備校や学習塾では実際にデジタル教材が扱われるケースが増えています。音声や動画を埋め込むことで音声や視覚からも情報を得ることができて、学習効果を高めるのに役立っています。

現在の法律では紙の教科書を主として、補助でデジタル教科書を併用することが認められています。原則としてデジタル教科書は紙の教科書と同じ内容にしなければいけません。ただし、デジタル教科書でさまざまな機能を付加できます。テキストの読み上げやページの拡大、フォントや配色の変更といったことが可能です。教科書にマーカーをつける、ペンツールで書き込むといったこともできます。小学校や中学校の中にはタブレット端末を生徒に貸し出す学校が増えており、授業でデジタル教科書が活用されるケースが増えています。

デジタル教科書と関連してオーディオブックも教育現場での活用が進められています。たとえば、オーディオブックの英語教材を用いて英語の発音を練習する小学校が存在があります。今後はオーディオブックが教材として採用されるケースは増えるでしょう。

まとめ

電子書籍は右肩上がりで成長している分野であり、まだ伸びていない領域もあるため、今後の将来性は期待できます。アプリによる販売や教育現場での普及などで、電子書籍はさらに多くの人が利用し、生活に根付いていくでしょう。