出版業界は衰退していると言われることが多いです。それでは実際のところ、出版業界の売上はどうなっているのでしょうか。本記事では出版業界の売上推移や今後の予想について紹介します。

2022年の販売金額

出版月報によれば、2022年の出版物の上半期の売上は8,334億円でした。8,334億円は紙と電子を合算した数字であり、紙の出版物の売上は5,961億円、電子書籍は2,373億円の売上となります。紙の売上は7.5%減ったのですが、電子書籍の売上は8.5%増えました。

紙の出版物は書籍も雑誌もともに苦戦しています。いずれのジャンルにおいても、紙の書籍の売上は前年割れしている状況です。一方、電子書籍の中ではコミックの売上が1割増えました。電子書籍でコミック以外のものの売上は微減となっています。

各出版物における推移

各出版物の売上の推移を紹介します。

書籍類の推移

書籍類の売上がピークだったのは1996年のことです。1996年の書籍類の売上は1兆931億円でした。1996年からは書籍の売上がずっと右肩下がりを続けています。毎年、徐々に書籍類の売上は減っており、2000年には書籍類の売上が1兆円を割りました。その後も下がり続けていき、2021年の書籍類の売上は6,804億円となっています。

ただし、書籍類の売上について近年は横ばい状態となっていて、比較的健闘している方です。2010年代の半ばから特に教育系分野の需要が堅くて、書籍類の売上は現状維持を続けています。

雑誌類の推移

雑誌類の売上も書籍類の売上と同様に1996年をピークとして右肩下がりを続けています。1996年には雑誌類の売上が1兆6533億円ありました。この頃は雑誌の方が書籍類よりも売上が大きかったです。1996年以降は雑誌類の売上が下がり続けていき、2016年には雑誌と書籍類の売上は逆転しました。多くの雑誌が休刊・廃刊となっています。2021年の雑誌類の売上は5,276億円でした。

全体の売上推移

出版物全体の売上は1996年の2兆6,564億円がピークでした。その後は書籍も雑誌類の売上も右肩下がりの状態となっています。ただし、2014年からは電子出版の売上が年々増していて、電子出版の中でもコミックの売上が大きいです。出版物全体の売上は2020年が1兆6,168億円、2021年は1兆6,742億円でした。近年は電子出版の売上が伸びているため、出版物全体の売上は徐々に増えています。ただし、2020年や2021年の出版物の売上はコロナによる巣ごもり需要による影響が大きいため、今後も売上が増え続けるかどうかはわかりません。

電子書籍の売り上げ推移

電子書籍の売上推移を紹介します。

電子書籍類の推移

電子書籍類の売上は2014年が192億円でした。そこから右肩上がりを続けており、2015年には228億円、2018年には321億円、2020年は401億円でした。2021年は449億円であり、電子書籍類の売上は成長を続けています。

電子雑誌類の推移

電子雑誌類の売上は2014年が65億円でした。そこから2015年が105億、2016年が160億、2017年が178億円と売上が右肩上がりの状態でした。しかし、2018年の売上は156億円であり、売上が前年よりも落ちました。2019年は電子雑誌類の売上が130億円、2020年は110億円、2021年は99億円と電子雑誌類の売上は落ち続けています。

電子雑誌類の売上が落ちたのは、NTTドコモが提供する定額制雑誌読み放題サービスであるdマガジンの会員数が減った影響によるものです。また、紙の雑誌の売上も落ちているため、そもそも雑誌類の需要が減っていることも原因であると考えられます。

電子出版全体の売上推移

電子出版全体の売上は2014年に1,144億円でした。そこからずっと右肩上上がりを続けています。2015年は1502億円、2016年は1,909億円、2020年は3,931億円、2021年には4,662億円まで売上が伸びています。電子出版全体の売上が大きく伸びた原動力として電子コミックの影響はとても大きくなっています。2021年において電子出版全体の売上のうち電子コミックの市場占有率は88.2%でした。電子コミックで漫画を読むという習慣が完全に定着しており、今後も売上が伸びていくことが期待されています。

今後の出版業界を予想

出版業界の現状として紙の書籍の売上は低迷が続いています。一方で電子書籍は好調であり、順調に売上を伸ばしている状況です。今後も紙本の売上はあまり伸びていかず、電子書籍は好調の状態が続くと予想できます。

ただし、電子書籍が売れたとしても、紙本の売上が上がっていかないと、出版物全体の売上は伸びていかないでしょう。そして、紙本の売上がこれから大きく伸びるとは考えにくいため、出版業界の売上が大きく好転する可能性は低いです。これから電子書籍が売れ続けたとしても、昔ほど出版業界の売上が上がっていくのは難しいでしょう。

まとめ

出版業界は衰退していると言われることが多く、実際に紙の出版物の売上は落ちています。ただし、電子出版は主に電子コミックのおかげで売上が伸びていて、出版物全体の売上はここ数年横ばいになっているのが現状です。これからも電子出版の市場は伸びていき、紙の出版物の売上は減っていくと予想できます。昔ほど出版物が売れる時代がやってくる可能性は低いでしょう。