書店に並ぶ本の中には常備寄託されたものがあります。本記事では常備寄託の仕組みやメリット、長期委託との違いについて説明します。
常備寄託とは
常備寄託(じょうびきたく) とは、出版社と書店が事前に契約し、一定期間指定の書籍を常時販売することです。
陳列商品が売れると、速やかに補充し再陳列します。
ここでの一定期間とは、1年や2年程度です。
常備寄託の本は書店の店頭に並んでいますが、あくまでも出版社の在庫商品として扱われるのが特徴です。そのため、多くの場合で常備寄託では書店は仕入れ金を支払う必要がありません。
常備寄託の仕組み
常備寄託では初回の書籍分について代金を支払う必要がありません。あくまでも出版社から本を預かっている契約だからです。寄託というのは預かるという意味であり、常備寄託された本は書店に並んでいてもあくまでも出版社の在庫です。
常備寄託では書店に対し、いくつかの条件が設定され、書店は条件を守らなければいけません。その中でも重要な点、書店は預かっている本が売れた場合、必ず補充しなければいけないことです。書店は寄託を受けた本が1冊でも売れれば、速やかに補充を行い、その分の費用を支払います。
また、常備寄託する本の内容を決めるのはあくまでも出版社です。常備寄託される本のセットは常備セットと呼ばれます。常備セットの中に書店が望まない本が含まれる可能性もありますが、書店は出版社の指定する本をすべて書棚に並べなければいけません。
常備寄託の契約期間中は常備セットをすべて書棚に出す必要があります。売れない本を途中で出版社に返品することはできません。
書店は在庫リスクもキャッシュフローも傷めず、本を仕入れることができる代わりに、上記のような条件をクリアする必要があります。
常備寄託をするメリット
常備寄託は書店と出版社の両方にとってメリットのある契約です。
常備寄託は書店にとっては、仕入れの費用をかけずに、本を常時陳列できる点がメリットといえます(正確には仕入れ時の先行するキャッシュアウトを無くす効果)。常備セットは、出版社が売り出したい本が中心の場合も、資格試験本など網羅的にラインナップしたい本が中心の場合など多様です。
一方、出版社にとっては、特に販売促進をすることなく自社の本を書店に陳列できるのがメリットです。常備寄託の契約では一定期間内は本が返品されることはなく、売れた時にはすぐに補充してもらえます。常備寄託は出版社にとってメリットの大きい契約のため、常備寄託を活用する出版社は多いです。
ただし、常備寄託は時間が経過すると本のラインナップが古くなります。常備寄託を受けたタイミングまでの新刊しか含まれていないからです。寄託期間が終了するとすべて返品されるため、売れている本も常備から同時に外れてしまうケースがあります。
長期委託との違い
常備寄託と似た制度に長期委託があります。
長期委託とは、主にセット商品を一定期間書店に陳列し、委託販売する契約です。委託期間は4~12ヶ月程度とされています。長期委託では常備寄託とは異なり、本が売れたとしても書店側に補充義務はありません。委託品は書店の仕入れ在庫であり(仕入れ時に代金を支払う必要があり)、委託期間が終了した場合は、返品され代金精算されます。
長期委託では既刊本を、テーマや季節などに合わせてセット組みしたものが多いです。書店には常備寄託の本だけではなく長期委託の本も多数陳列されています。
長期委託の詳細は、長期委託とは?を参照してください。
まとめ
書店には常備寄託された本が陳列されています。常備寄託は仕入れ時に支払いがなく、書棚を充実させられる点が書店にとって大きなメリットです。ただし、常備寄託にはデメリットもあるため、書店は本来の「売れるか」との両面をにらみ、ラインナップを揃える工夫をする必要があるようです。
