出版した本は、様々な方法によって読者の元に届きます。近年では、実店舗の書店だけでなく、Amazonのようなネット書店やSNS等を通じた著者の直接販売など、販売方法も多様な形となってきました。

今回は、実店舗の書店でどのようにして本が並ぶのかについて、ご説明したいと思います。

どんな書籍でも書店に並べることはできるのか

皆さんが出版社に持ち込んだ原稿が、本としてデザインされ、印刷されました。このとき、流通させるために必要な大事な作業があります。

ISBN(International Standard Book Number)といって、国際標準図書番号といいます。これは、世界共通で書籍を特定するための番号になります。現在、この番号は13桁の番号で構成されており、こちらを発行することで、皆さんが出版した本が、どこに流通しても特定できるようになります。

日本では、このISBN(国際標準図書番号)、分類記号、価格コードという3種類の情報で構成された「日本図書コード」というものが使用されています。

書籍の後ろに2つのバーコードが有ると思いますが、これが日本図書コードを読み取るためのバーコードとなります。このバーコードの下に、日本図書コードが掲載されている場合が多いです。

日本図書コードを取得してはじめて、全国の書店への流通が可能となります。

言い換えると、バーコードの付かない書籍では書店に並べることは難しいと言えます。

自費出版した書籍を書店へ配本する

自費出版した書籍が書店の店頭に並ぶ方法としては、主に「①取次店を通じた流通」、「②書店から直接の注文販売」、「③著者自ら書店に売り込む」といった方法が考えられます。

取次店を通じた流通

出版した本は、出版社から取次店と呼ばれる、本の卸売業者に回されます。この取次店が、全国の書店への流通を担います。

全国には出版社が約3,000社ありますが、出版社の規模によっては、直接書店への配本が難しい場合があります。また、書店側も何十社、何百社の出版社が直接本を持ってこられても大変です。

このような手間とコストをかけず、効率よく全国の書店に本を流通させるために、書籍や雑誌に特化した物流を担うのが取次店となります。

この取次店と契約している書店に、本が配本されることとなります。では、皆さんが出版した本は、どうやって配本される書店が決められるのでしょうか。

新刊の配本は、取次店が基本的に定めます。過去の書店の売上データや、本の分類など取次店のこれまでの販売実績から、各書店にふさわしい数の新刊を配本します。

全国には、約1万店の書店があります。仮に、皆さんが1,000部流通させたとしても、全国の書店全てに並べることはできません。ただ、書店にはそれぞれ売上の傾向があり、例えば、ビジネス街であれば実用書やビジネス書が多く売れ、一方で大学に隣接した書店では、大学の専攻に関する専門書や語学の参考書などが多く売れたりします。

取次店では、このような過去の売上の傾向を見て、皆さんが出版した1,000部の配本先を決め、書店に並ぶこととなります。

書店からの注文販売

この場合は、発行した書籍を営業等によって書店に知ってもらい、書店側が売れると判断した場合に、書店から出版社に対して直接注文が入ることがあります。

この注文販売は、書店に在庫の無い書籍をお客さんから注文を受けた際にも使われる方法になります。(取次に対し注文する場合もあります。)

著者自ら書店に売り込む

出版社に書店への営業を委託することも出来ますが、営業マンとしては、あくまで出版社から発行している何十冊のうちの1冊であるため、出版した本の良さを書店側に理解してもらうことが難しくなります。

書店営業は、出版社が行うのが慣習となっていますが、著者自ら営業を行うことが禁止されているわけではありません。

チェーン店の書店では、本部の意向などがあり、なかなか営業を受けた本を独断で書店に置くことは難しい場合もありますが、個人書店や地域密着型の書店であれば可能性はぐっと広がると思います。

また、書店の販売員としても、棚や販売コーナーを作っていく上で、テーマや本のアイデアが欲しいときもあります。こうした特集コーナーは、季節柄決まっているもの(受験や就活シーズンがわかりやすい例)とそうでないものがありますが、書店独自に特集コーナーを設けているときは、その一部として本を置いてもらえるチャンスかもしれません。また、営業した本を中心として棚やコーナーを設けるなどのことも出来るかも知れません。

著者側にとっては労力のかかる活動ですが、検討してみると良いかと思います。

書店の店頭に並べてもらうには?

いわゆる多面販売、面陳列、ワゴン陳列等と呼ばれる方法です。

これら陳列をしてもらう方法の王道は、書店に売れそうだと思ってもらい、大量に注文いただくことです。(応えるだけの在庫があることは大前提です。)

そのための書店営業が並べてもらうためのアクションと言えるでしょう。

書籍のテーマ、内容の出来不出来の影響も受けますが、手数料を支払うことで面を買うことも可能です。(あまりこの表現が良いのか悩ましいですが、「買う」ということです。)

営業代行会社もありますので、ご興味があればそのような会社に相談すると良いでしょう。

まとめ

このように、本が書店まで並ぶには「取次店」が大きな役割を担っていますが、書店側が興味関心を示す場合や、著者自らが売り込むなどといった方法もあります。

本の流通は、他の業界の流通とは違う部分もあります。この流通の流れを知ることで、新刊の印刷部数や、著者自ら書店に営業する計画などを検討するための参考となれば幸いです。