自費出版とは

自費出版とは読んで字のとおり、自分で費用を出して本などの出版物を作ることです。本来、出版物は出版社が「これは売れるから利益が出る」という見込みのもと、出版社がお金を出して作ります。しかし自費出版の場合、作者自身が自分の伝えたいメッセージなどを形に残して多くの人に知らしめたいといった思いから自分でお金を出して出版物を作ります。

著者をカモにする自費出版商法

自費出版商法の典型的な手口としては次のようなものがあります。 「今回、私たちではコンクールを実施し、ジャンルを問わず、読み物として優れた作品を広く募集しています。最優秀作品は本として売り出し、私たちがバックアップします」といった形で、書き手を募ります。そして、応募した人に対して「今回は惜しくも最優秀作品にはなりませんでしたが、この作品はとても魅力的だと思います。今回はあなたが費用を出してこの作品を本にしませんか」と自費出版を持ちかけてきます。 このようにして自費出版の話に乗ると、たいていの場合、出版にかかる製作費や印刷費は自腹で、在庫も自分で抱えることになります。つまり、自費出版では出版社は本を売って利益を上げるのではなく、書き手が捻出する製作費や印刷費を自分たちの利益とするわけです。

より悪質な出版詐欺

自費出版商法よりもさらに悪質な、いわゆる「出版詐欺」というものもあります。これはどういうものかというと「あなたの作品を本にしますので、製作費と印刷費を先払いしてください」といってお金を受け取ると、そのまま雲隠れしてしまうのです。あなたをカモとしてしか見ていない悪徳業者による悪質商法の手口です。

自費出版商法以外でのトラブル

本を出版するに際してはさまざまなトラブルが発生する可能性があります。以下より代表的なものを見ていきましょう。

契約に関するトラブル

著作権、編集権、印税、在庫保管料などについて著者に不利な条件で契約をさせられてしまうことがあります。契約書をよく見ると、想定していなかった費用まで払う契約になっていたなどといったことがないよう契約書は事前によくチェックしましょう。

製本に関するトラブル

手書き原稿の出版をお願いする場合、ワープロソフトなどで文字をデータ化する必要がありますが、このときミス入力をされてしまい、そのまま本になってしまうといったケースがあり得ます。出版する前に校正紙は入念にチェックするようにしましょう。

宣伝・流通に関するトラブル

出版契約を結んだのはよいけれど、契約通りに宣伝広告をしてくれない、本を書店に置いてくれないなど、出版後こちらが期待しているようなフォローをしてくれないケースです。

自費出版はリスクしかない?

自費出版商法は公募やコンクールで作者の出版ニーズを引き出し、そこに付け込んでお金を儲けようとするという点で悪質です。しかしその一方で「自分のメッセージや思いをより明確に伝えていく」という点において自費出版は有効な手段の一つであることは間違いありません。

自費出版トラブルを回避するには

「自分の著作でお金や名声を得よう、ビジネスにしよう」と考えるのでなく、「自分のメッセージや思いをより明確に伝えるための有効な一手段として自費出版を活用しよう」と割り切って考えることで、自費出版に対する姿勢や取り組み方、出版社に期待することなどが変わってきます。

出版社の情報を集める

自費出版でよりよい出版物を作ろうと思ったら、自分のメッセージや思いをより正確かつ適切に伝えるためのサポートをしてくれる出版社に依頼する必要があります。 実際のところ、自費出版を持ちかけてくる出版社の中には怪しい会社もあります。実在する出版社なのか、実績はあるのか、口コミではどうなのかなどを調べるようにしましょう。

第三者にも相談する

自費出版とはいえ、出版社と契約を結ぶことになれば、売上分配金、著作権、編集権など出版社と取り決めなければならないことが出てきます。出版契約を交わす場合は、家族や友人、場合によっては弁護士などに相談して、契約に問題がないかを確認するようにしましょう。

分かるまで説明を求める

出版後に、双方に不信感が生じ、トラブルに発展するといったことがないように、分からない部分は全て質問をして、不明な点を無くすようにしましょう。

出版社とこまめにコミュニケーションをする

「相手は出版のプロだから」といって任せきりにするのはよくありません。自分の要望をしっかり出版物に反映させるためには、より綿密なコミュニケーションが不可欠です。コミュニケーションが深まることで、双方の勘違いや思い違いもなくなっていきますし、出版社のあなたの作品に対する認識が深まり、あなたに対して適切な提案を行いやすくなります。

AmazonのKindleならトラブルが少なく出版できる

AmazonのKindleダイレクト・パブリッシング(以下KDP)を使うと、電子書籍を無料で出版し、Amazonのサイトで販売することができます。KDPを使ってのAmazonサイトへの掲載は自分で行い、そこに出版社が関与しないので著作権や印税などのトラブルをなくすことができます。ただ、これはAmazonという大海に小さい船を浮かべたようなもので、読者の注目を集め、売れるようになるのはなかなか困難です。もしビジネスとして成り立つくらいしっかり販売したいというなら、自分で宣伝などをする必要があるということはぜひ覚えておいてください。

まとめ

自分が育て培ってきたノウハウ、手記、詩歌、写真、絵画などがあれば、それを世に出してみたいと考えるのは自然なことです。その思いに付け込んで出版を持ちかけてくる悪質商法に乗っかると、お金を搾取され、肝心の出版物が置き去りにされてしまうリスクが高くなってしまいます。 自費出版をしたいと思うならば、「それでビジネスをしよう」という考えを優先させるべきではありません。それよりも「自分の出せる予算内で、自分の作品を少しでもよいものに仕上げて、一人でも多くの人に知ってもらおう」という姿勢で臨むようにしましょう。そしてあなたのそのような思いにしっかり寄り添ってくれる出版社と付き合うようにしましょう。