自費出版本を出す際にはどのくらいの利益が出るのか気になるものです。損益分岐点がわかれば、価格設定をいくらにして何冊出版するべきか把握できます。本記事では自費出版本の損益分岐点や売るためのポイントを紹介しましょう。

自費出版本は一冊売れるといくら儲かる?

自費出版本で支払われるものは厳密にいえば印税ではありません。売上分配金という言葉がよく用いられます。売上分配金とは出版社から著者に支払われる書籍売上金の一部を言います。

細かな点ですが、印税は著作物利用料の俗称で、原稿を使わせてもらう対価として著者に支払われる性質のものです。自費出版は著者が著作物を作り、著者自身が所有する書籍を販売しますから、利用料という名称は実態に合いません。

売上分配金は、書籍の売り上げから書店や取次店の取り分を差し引き、そこから配送や事務手続き費用等を差し引いた金額を言い、実務上は計算を簡単にするため、事前に率を定めておく場合が多いです。

売上の40~50%程度を分配割合として定めている自費出版サービスが多いでしょう。

売上分配金の計算例

1冊1,000円の本が1冊売れた場合は、著者の受取金額が500円です。
1冊1,500円が1冊売れた場合:著者750円。
1冊2,000円が1冊売れた場合:著者1,000円。

売上分配金について業界ルールがあるわけではなく、出版社毎に割合は異なります。

相場を理解しておき、相場より低い割合を提示された場合は別の出版社との契約を検討した方が良いでしょう。

自費出版本の損益分岐点

損益分岐点を求めるためには1冊あたりの原価を知る必要があります。書籍づくり本舗の価格を例にすると、100ページの本を500部出版するのにかかる費用は331,120円です。

売上分配率は50%のため、損益分岐点は「売上部数×定価×50%=費用」で計算できます。

上記のケースで定価を2,000円にした場合の損益分岐点は「売上部数×2,000円×50%=331,120円」です。損益分岐点に至る冊数は331.12であり、332冊売れれば費用を回収できることがわかります。定価を高くすれば、損益分岐点の売上部数を下げられるのですが、高い分だけ売れにくくなるでしょう。

自費出版本は高い定価設定で売るか、冊数多く売れなければ費用を回収できないことがわかります。(自費出版に限らず、商業出版も部数が伸びなければ費用は回収できない点で同じ構造です。)

実際には出版社に依頼をする段階で印刷部数を決めることが一般的です。費用を回収できるだけの部数と価格を設定します。

定価と売れ行きの関係

定価をどの程度まで引き上げると売れ上げが落ちるかという正確なデータはなく、またジャンルや判型による違いもあります。

文庫や新書判は購入側の印象として安いイメージがあるため、四六版やA5判を選ぶことが良いでしょう。

自費出版本を売るためには

自費出版本を多く売りたいならば、以下のポイントを意識しましょう。

  • 広告宣伝をする
  • 書店営業をする
  • 通販や即売会など販売方法を増やす

売上を増やすポイントを詳しく解説します。

広告宣伝をする

Amazon内広告やSNS広告等を用いて、宣伝活動をすることが大切です。

個人でお持ちのSNSアカウントがあれば、自著の宣伝することも忘れずにしましょう。

新聞広告や電車内広告も有効な手段ですが、広告費が数十万円~でかかるため、初版が数千部以上の場合にのみ検討すると良いでしょう。

自費出版本を買ってくれた人からの口コミも大切にします。たとえば、周囲の人に自費出版本の感想を広めてもらいます。SNSなどで自費出版本の感想をアップしてもらうのも効果があるでしょう。口コミで面白い本であるという評判が広まれば、興味を持つ方を増やすことができ、実際に本を買ってくれる人が増える可能性があります。

書店営業をする

書店に営業をして自著を棚に並べてもらうという方法があります。ただし、大型書店の場合は本部の意向で販売する本が決められている場合もあり、直接営業しても効果が期待できないケースもあります。

書店に営業をする際には本の魅力をわかりやすく伝えることが大切です。また、口コミなどの情報を提供して、本が売れる根拠を伝えることも意識しましょう。本を宣伝するための自作のPOPを用意しておくと、書店の棚で本を大きくアピールできます。

営業にはマナーがあります。また注文してくださる書店様へ伝えるべき情報などもあります。営業前に出版社と相談してから進めましょう。

通販や即売会など販売方法を増やす

自費出版本の販売方法を増やすことで売上を増やせます。自費出版本の販売は書店にこだわる必要はありません。たとえば、通販サイトに店舗を構えて直接販売するという方法があります。あるいは、即売会に参加して来場者に本を売ることも可能です。

セミナーなどを開催する方は、セミナー後に販売するのもひとつでしょう。本の販売方法を増やすことで、より多くの人にアピールすることができ、本を買ってくれる人を増やせます。

また、電子書籍として販売することも検討しましょう。電子書籍の場合は電子書籍の配信サイトに登録することで本の販売ができます。電子書籍の場合は印刷する必要がなく、ネット上で読めることが特徴です。電子書籍であれば、全国各地の人たちに自分の本を販売できます。

まとめ

自費出版本の損益分岐点は「売上部数×定価×売上分配の割合=費用」で計算できます。費用をきちんと回収できる価格設定を心がけましょう。出版社に依頼すれば、価格設定を任せることも可能です。