自費出版をしたいが儲かるか気になる人は多いのではないでしょうか。自費出版書籍はほとんど売れないと聞くこともあるかと思います。本記事では実際のところ自費出版は儲かるのか、儲かるにはどうすればいいのか解説します。
自費出版とは
自費出版とは、著者自身が費用を負担して書籍を出版することです。対比される商業出版とは異なり、自費出版では制作・印刷・流通をご自身の費用負担において行う必要があります。自費出版をサポートする安価な出版サービスが増えたことから、出版社のサポートを受けて出版することが一般的になりました。
また、最近は電子書籍が普及し自費出版のハードルは低くなっています。電子書籍であれば、印刷の必要はなく、簡単に販売できるからです。
自費出版本の利益計算方法
自費出版本の利益を考える上で重要な点は売上の分配率です。分配率とは書籍の売上のうち、著作者が受け取る割合を言います。(売上還付金とも呼ばれます。)
自費出版本の利益計算は売上を100とした場合、35程度が取次店と書店への支払い分です。書籍の配送にかかるコストが5程度、返本率が高い場合には倉庫の入出荷コストや返本時の配送コストが余分にかかります。
つまり、売上分配率は書籍の流通の構造上、最大で50%台なかば程度、平均的には40%程度が多いでしょう。
ここから制作、印刷等の原価を差し引いたものが著者の手元に残る利益となります。
(重版時は率が変わることもあるため、注意が必要です。)
自費出版は儲かるの?
原則として、自費出版は儲かりません。
一般的なジャンルで、定価が1,000円~2,000円ほどの書籍であれば、3,000部刷って6割程度(1,800部)売れることが赤字黒字のラインでしょう。
医学書や研究機関向け書籍などの一部ジャンルで、定価が5,000円~1万円程度の値付が可能な場合には、数百部の刷り部数でも黒字化が可能です。
これらは自費出版、商業出版に限らず、出版業のビジネスモデル上言えることで、冒頭「原則、儲からない」と書かせていただいたのは、1,800部以上売ることそのものが難しいためです。
自費出版で儲けるのは不可能?
自費出版で利益を出す(儲ける)ことは、不可能ではありません。
自費出版本から始まり、100万部を超えるヒット作も存在します。ミリオンセラーとはならずとも、数万部売れた作品も数多くあり、十分利益が出ている作品があることは事実です。
(割合としては低いため、過度な期待は禁物です。)
自費出版で儲けるためには
自費出版で儲けるにはどうすればいいのか説明します。
売れるジャンル、テーマで書く
ビジネスで言われることですが、出版においても「どの池で釣りをするか」という考え方が大切です。池のサイズ、魚の数(読者様に対して失礼な比喩ですが、一般的に言われるお話なので、そのままとします。)を意識しましょうというものです。
ニッチなテーマで、関心を持つであろう読者人口が100人の池で釣りをすれば、釣果は最大でも100冊です。
(すべての方が2冊ずつ買うなどのイレギュラーケースはここでは考慮していません。)
関心を持つ方が多い、読者人口1,000万人の池で釣りをすれば、全体の1%が購入するだけでも釣果は10万冊です。
当然、大きな池ほど競合も多く、熾烈な戦いになりますが、売りたい部数と池のサイズを考慮することは一丁目一番地と言えるでしょう。
宣伝・営業をする
出版に限らず宣伝、営業は重要です。
個人の発信力がある方は、SNSを活用することが多いです。ご友人に発信力が強い方がいれば、献本等をし、書籍を紹介してもらうことも一つでしょう。
宣伝は直接的な売上に繋がる広告(費用とコストのバランスが優れた広告)と、書店営業に繋げる広告とを区分して取り組むと良いでしょう。
新聞広告出稿時やパブリシティーが獲得できた場合の書店営業では、注文配本を伸ばしやすいため、連携した動きが重要です。
(商業、自費問わず、テレビやラジオ・雑誌等で紹介されると書店への配本数は伸ばしやすいです。)
著書と相性の良い出版社を選ぶ
ジャンルの向き不向きと、出版にかかる費用の視点から選ぶことが大切です。
出版社ごとに得意とするジャンルは異なっているため、自費出版したい本のジャンルを得意としている出版社に依頼しましょう。
どのような仕様で、どの程度の部数、どういった流通をしていきたいかに応じて、費用面で優れた出版社を選択することが大切です。費用は出版社により数百万変わることもざらです。損益分岐点を引き下げ(費用が少ないと黒字にするための売上も少なくて済む)る努力も意識します。
販売方法を増やす
自費出版本の売り方は本屋に置いてもらうだけではありません。他にも、直販やイベントへの参加、電子出版化といった方法があります。できるだけ多くの販売方法を用意することで、本が売れる可能性を高められるでしょう。
儲けるためには契約内容に注意すること
自費出版で儲けたいならば、契約内容に注意しましょう。どの程度の費用がかかるのかを確認します。出版社ごとに契約内容は大きく異なるため気をつけてください。実際にその出版社と契約して本が売れた場合に、どのくらい売上が払い込まれるかあらかじめシミュレーションしておきましょう。
増刷時の費用も把握するとより安心です。
Kindle出版(電子出版/電子書籍出版)なら儲かる?
Kindle出版で儲けることができるのか解説します。
Kindle出版とは
Kindle出版とは、Amazonの提供する電子書籍サービス(Kindle)上で本を作成、販売することです。自費出版でKindle出版している人は多く、出版社を用いず、誰でも簡単に出版できるのも特徴です。売上のうち何割かがロイヤリティとして差し引かれ、残り部分が著者に支払われます。
Kindle出版でも売れるとは限らない
Kindle出版は世界中の人達を対象に本を売り出せるのがメリットです。ただし、電子書籍アプリをインストールしていない方々にはアピールできません。また、当然ですが本として実体がないため書店に陳列することはできず、販路は限定的です。
気軽に出版できるのがKindle出版の魅力ですが、その分だけ競合も多く、作品が埋もれやすい点も認識しましょう。
Kindle出版は赤字になりにくい
Kindle出版は印刷代や配送料、在庫保管費がかからず、コストはほぼかかりません。そのため、たとえKindle出版で売れなかったとしても赤字になりにくいです。自費出版したいけれどもコストがかかるのを避けたい方にKindle出版はおすすめできます。
まとめ
自費出版は原則、儲からないとされています。ただし、適切な部数を定め、宣伝・営業・売れるジャンル選び、出版社選びをすることで、売れる可能性を高められるでしょう。また、Kindle出版であればコストがほぼかからないため、リスクなく自費出版に挑戦できます。