自分が書いた本を出版したいという気持ちを持っている人は、世の中を見回してみれば意外に多いものです。
小説やエッセイ、有名人でなくとも自叙伝を書いて出版したいと思っている人もいるでしょう。
しかし、そういう思いを抱えた人たちにつけ込む「出版詐欺」という詐欺が存在することをご存知でしょうか。
出版の方法には「自費出版」「共同出版」「商業出版」といったものがありますが、注意していただきたいのは「自費出版」に関わる詐欺です。
出版詐欺には、どのようなものがあるのか?
ここでは「詐欺」と記載していますが、多くの場合で契約書が交わされ、正常に商取引として成立しており、詐欺事件にはならないものが大半です。
(便宜上、以降も出版詐欺という言葉で話を進めます。)
ここでは、3種類のメジャーな話をご紹介します。
コンテスト(新人賞)の開催
著者物を世に出す方法として、コンテストへの応募があります。
ジャンルが限定されたものもあれば、大規模なものまで多様です。ご自身がどのようなものを書いて、どの賞へ応募するかで投稿先の出版社も違います。
名の知れた大手出版社もあれば、小さな出版社もあります。疑ってしまえばきりがないことではありますが、この賞への投稿を利用した出版詐欺が存在します。
たとえば、実際に賞への投稿をします。主要な賞を受賞するのは実に困難なことでもあります。
それでも立派に受賞し、ベストセラー作家として出版への道が切り開けるなら全く問題はないでしょう。
ところが、ここで問題となるのは受賞者がいれば当然、他の投稿者は落選したと考えて間違いはありません。
この落選者に対して出版社から連絡が入り「非常に惜しかった」「ここを修正すればもっと良い作品になる」「こうすれば絶対に売れる」といった言葉を投げかけます。
落選したとはいえ「惜しかった」「良い作品」「絶対に売れる」などと言われれば、応募者としては大変嬉しいことと感じるのはおかしいことではありません。
そして、ここから上手く誘導されてしまうのです。
「これだけの良い作品を出版しないのはもったいない」「少し修正すれば絶対に売れる作品になる」だかこそ「自費出版してみませんか」と、言葉巧みに「自費出版」へ誘導するのです。
本当に良い作品、売れる作品だと出版社が自信を持って評価してくれるのであれば、商業出版という形で出版費用を全て出版社が背負って良いはずです。(最近の出版不況もあり、宣伝費用の一部負担を著者に求める会社も多いことから区別が難しいです。)
言葉巧みに自費出版を勧められた本人としては、自分の本が世に出るならと思うものでしょう。
悪質なケースは、売れることで得られる印税で、支払った費用は取り戻せるとうたうそうです。自費出版は、出版費用が印税額を上回る場合が多いため、一定部数売れたとしても回収はできません。そうなると出版社とのトラブルが発生するのは言うまでもありません。
もっと悪質な手口になると、費用を支払ったのちに出版社と連絡が取れなくなるケースがあります。
自分の本が書店に並ぶこともなく、お金だけを騙し取られるというケースです。自分の書いた本が世に出回る、全国の書店に並ぶ、多くの人に読んでもらえるという夢を持ち、大きな希望を胸に抱いた人たちの欲望に上手くつけ込んだ非常に悪質な出版詐欺だと言えるでしょう。
勧誘型の自費出版
上記と似ているのが「勧誘型」です。インターネットの普及で電子書籍やブログで人気が出て、出版に至る人も数多くいます。
特にブログなどは出版社や編集者も目を通すことが多く、出版社側からのオファーにより出版することになるケースも増えてきました。
しかし、ここでも「本にしてみませんか」「是非出版しませんか」などと勧誘しつつも実のところは自費出版で費用だけを騙し取られるといったこともあるようです。
ただ、実際に商業出版し売れ行きも上々のケースもありますから、出版社の選定も本当に難しいものです。
共同出版
3つ目として「共同出版」を挙げてみます。
出版社と費用を折半して出版できるのは、費用の全てを負担するケースと比較すると、魅力的な出版方法でしょう。
しかし、実際に折半できているのかどうか、明確な部分を把握しないまま請求された費用を支払ってしまうのは危険です。
詳細は不明瞭なままであったり、出版時にかかる周辺費用は著者負担であったりと、全費用を出版社ときれいに折半ではないケースが存在するようです。
共同出版に関しては出版社側との話し合いと、費用についての詳細な明細を確認したうえでしっかりと契約を交わすことが重要です。
後々トラブルに発展しないよう、本当の意味での共同(協力)出版をし、自分の執筆した本を少しでも多くの世の中の人の目に触れ、手に取ってもらえるようにすることがお互いの利益につながるのです。
出版詐欺に遭わないための心構え
ここまで出版詐欺について説明してきましたが、さまざまな出版社が存在するなかで、どこの出版社が安心できるのかという判断は自分で調べ、自分で判断するしかありません。
なかには原稿料未払いのまま、自分の執筆したものが何かしらの形で掲載されていたということもあるのです。
上記と類似するケースでも、まともな出版社が存在しているのも事実です。
大切なことは、出版社から契約書をもらい内容を確認すること。不明な点があれば詳細を質問することです。良い出版社に巡り会うため、しっかりと確認を怠らずに進めましょう。