自費出版をするためには費用がかかります。自費出版をして大きな赤字にしないためには、費用を考慮した上で価格設定することが大切です。本記事では自費出版の費用や売上金の計算方法、販売価格の決め方について解説します。

自費出版本の売り上げはどう計算する?

まず、自費出版本の売上の目安として、成功した場合は印刷部数の7割の売上を見立てましょう。対する売れない場合には、印刷部数の1割程度の売上になると見立ててみましょう。

自費出版本の売上は、「定価×消費税×売れた部数」で計算できます。著者に振り込まれる金額を計算するには、売上金から流通経費を差し引かなければいけません。自費出版にかかる流通経費とは、配送費や小売店・取次店の取り分です。目安としては、これらを合算して売上の4割強になります。

倉庫での保管代や返本された書籍の処理にかかるコストなども考慮すると、売上の5割程度が経費になると考えると良いでしょう。

したがって、自費出版をした場合には、売上の5割程度が著者に振り込まれます。ここから自費出版にかかった費用(デザイン費用や印刷製本費用など)を差し引き、残額が利益です。

(厳密には税金のお話がありますが、当サイトは税の専門サイトではないため割愛します。)

通常、印刷したすべての本が売れるケースは稀であり、売れ残りが生じることがほとんどです。その点も考慮した上で実際にどれくらいの部数を印刷するのか考える必要があります。

どの程度の冊数売れるか?

ジャンルや著者のネームバリュー、過去の作品、値付けなどいくつもの要素に影響を受けるため一概に記載することが難しいテーマです。

「初めの作品を広告などはうたず、500部書店へ配本した場合、50部売れた」と聞いて、自費出版に詳しい方であれば、「よくあることだ」と感じるかと思います。

もし「1000部配本し、600部売れた」と聞けば、「すごい本に違いない、ぜひ読んでみたい」となるでしょう。

自費出版本の費用について

自費出版にはさまざまな費用がかかります。具体的にどのような費用がかかるか主なものを以下にまとめました。

  • デザイン費
  • 編集・校正費
  • 印刷・製本費
  • 書店流通費
  • 倉庫代

自費出版サービスを利用する場合、上記項目以外の費用を別途請求される場合があります。

例えば、書店営業を行う場合の営業代行費、新聞広告をうつ場合の広告実費と進行管理費などです。事務関連の費用を別途請求するケースもあるようですから、確認が必要です。

たとえば、200ページの単行本を自費出版で数百部印刷し流通させる場合は、50万円から100万円程度の費用がかかるでしょう。本の仕様のグレードを上げれば、その分だけ費用は高くなります。また、同じ条件でも出版社によって費用の見積もりは大きく異なります。

自費出版本の定価決め。損益分岐点は?

自費出版本を出す場合は定価を決める必要があります。通常、定価は著者が自由に決められます。定価は本の売上を大きく左右します。高すぎると売れなくなるからです。また、定価を安くすると費用を回収できなくなります。費用を計算し、売上金を設定することで、赤字を避けられたり、最小限にできたりします。

本の売上から費用を差し引いた残りが利益です。つまり、売上と費用が一致する金額が損益分岐点です。

たとえば、自費出版本を1,000部作り、80万円の費用がかかったとします。この場合は、80万円を1,000部で割れば、1冊あたりの費用は800円です。定価を800円以上にすれば、利益が残るでしょうか?

いいえ、考慮しなければならない点が2つあります。

  • 売上から書店や取次店等の手数料が差し引かれた金額が著者に戻る金額
  • 刷り部数全てが完売することは実際は実現しない

全冊手売りするケースを除き、上記2点を考慮しましょう。

詳しくは、次の損益分岐点に関する記事が参考になります。

自費出版本の損益分岐点は何冊から?価格設定は?売るためのポイントも紹介

その他の費用

自費出版本を流通販売する際にはその他にも費用がかかります。たとえば、広告費や営業費用です。無名の著者の本は売れないため、しっかりと広告宣伝する必要があります。出版社がプロモーションのプランを用意している場合は、プランの料金が広告費・営業費用に該当します。販促プロモーションの中には、各種広告出稿や書店への営業などが含まれることが多いです。

基本的に販促プロモーションはオプションとして用意されています。出版社の自費出版サービスの基本プランに販促プロモーションのサポートが含まれているかどうか事前にチェックしましょう。

また、自費出版本をイベントなどで直接販売するケースがあります。この場合はイベントに参加するための登録料などの費用や当日の交通費、書籍の配送費などが必要になるでしょう。

売れたのに赤字を回避。定価を相談するには?

自費出版では定価決めに失敗して赤字になるケースがあります。せっかく売れたにもかかわらず、赤字になったのでは増刷もしづらいでしょう。事前に慎重に定価を決めることで、赤字を回避し、必要な増刷にも対応できます。

自費出版本の定価を決める際は、依頼した出版社に相談しましょう。

依頼前で相談先がない場合、当サイト「書籍づくり本舗」のように無料で定価相談ができるサービスを利用するのも一つでしょう。

無料相談の詳細ページ

出版社であれば、プロの視点から定価を決める際の目安を教えてくれます。最適な定価を決められるでしょう。また、出版社であれば、各ジャンルの本について定価の相場を把握しています。類似書の価格を参考にしながら、適切な定価を相談しましょう。

黒字を目指す場合、必要な刷り部数は?

前提として、1000部程度の刷り部数で自費出版費用が200~300万円かかるサービスを利用する場合、黒字化は非常に困難です。

黒字を目指す場合、3000部程度の刷り部数で、返本4割(6割が売れる)がひとつのラインでしょう。商業出版の多くも、同等のラインがタイトル単位で超えたいラインです。

自費出版サービスの費用は3000部で100~150万円あたりを目安に選定し、定価1400円前後が黒字化の目安でしょう。

(当然ながら、費用が安ければ安いだけ黒字化の難易度は下がります。)

まとめ

自費出版する際には、費用や売上などについて事前にシミュレーションしておきましょう。どのくらいの定価で販売するのか考えることも大切です。出版社のサポートを受けて自費出版すれば、定価決めや費用などの問題を解決できるでしょう。