出版業界の重要な仕組みの1つが長期委託です。書店で扱われている本の中には長期委託のものがあり、他の制度とは異なる扱われ方をします。本記事では長期委託の仕組みや委託される期間などについて紹介します。

長期委託とは

長期委託とは、書店の店頭で長期に渡って書籍を販売することを条件とした委託契約のことです。長期委託の期間は一般的には6ヶ月程度、長いと1年とされていますが、期間について特に決まったルールはありません。

出版業界では委託販売制度が一般的に取り入れられています。出版社が取次を経由し、書店に本を販売してもらうのが委託販売制度です。所定の期間を過ぎた本については、書店は出版社に返品することができます。

通常の委託販売制度は書籍や雑誌などさまざまなものが対象です。ただし、長期委託の対象となるのは書籍のみとされています。

長期委託では委託販売の期間が長期に設定されており、委託期間を過ぎた本は出版社に返品が可能です。書店にとっては仕入れのリスクが生じないことが委託販売のメリットといえます。

長期委託の仕組み

長期委託の契約期間に決まりはなく、それぞれの契約ごとに異なっています。一般的には6ヶ月程度とされていて、その間の補充や展示については書店側に任せられています。契約が終了すると売れ残った本は返品できます。

仮に長期委託の本が売れた場合には、書店が再度仕入れて補充するかどうか決定します。補充するかしないかは書店が判断できるケースが大半です。委託期間が終了したときには、実際に販売できた本の代金を出版社に支払います。(6ヶ月の長期委託であれば、7~8ヶ月目に取次側が請求を上げ、その請求に対し書店が支払います。)売れ残った本は出版社に返品できるため、書店は在庫リスクを抱えることがありません。

どんな本を長期委託するの?

長期委託の対象となる本は比較的ライフサイクルの長い書籍です。たとえば、シリーズ物や専門書、資格試験の参考書などが該当します。シリーズ物については、長く書店で販売していても売れる可能性が高いです。また、専門書についてはブームとは関係のない書籍であり、長期に渡って店頭に並べていても売れる可能性があります。

実際にどのような本を長期委託で販売するのかはそれぞれの契約により異なるものです。長期委託したい本を出版社側が提案するケースもあれば、書店側で長期委託を受けたい本を選んで注文するケースもあります。

常備寄託との違い

常備寄託も長期委託と同様に委託販売する期間が長期に渡ります。常備寄託は書籍を店頭で販売する(陳列する)ことを条件として出版社と書店が交わす契約です。常備寄託の期間については1年から2年と長期に渡るケースがよくあります。

常備寄託と長期委託の大きな違いは、本が売れたときに補充の義務があるかどうかです。長期委託では補充の義務がないのですが、常備寄託の場合は本が売れたときに原則補充しなければいけません。

また、常備寄託は基本的に出版社が提示した本のセットを販売するのが一般的です。常備寄託のラインナップのことを常備セットと呼びます。常備セットの中には書店が望まない本が含まれるケースもある点は書店にとってデメリットです。

常備寄託では契約期間が終了するとすべての本を返品しなければいけません。売れている本であっても、期間が過ぎると返品する必要があります。常備セットに含まれる本は毎年変わるため、期間が終了するごとに常備入替の作業が発生する点は書店にとって大きな負担になっています。

それぞれの委託期間について

出版業界における委託期間について以下に表でまとめました。

 出版社-取次会社(委託期間)取次会社-書店(委託期間)
書籍新刊委託6ヶ月間3ヶ月半(105日)
月刊誌委託3ヶ月間2ヶ月間(60日)
週刊誌委託2ヶ月間45日間
長期委託 6ヶ月以内(例)7ヶ月間(8ヶ月目請求)6ヶ月間(7ヶ月目請求)
常備寄託
1年以上
(例)1年1ヶ月(1年2ヶ月請求)1年間(1年1ヶ月請求)

長期委託と常備寄託については、それぞれの契約内容で委託期間は異なるため、上記は一例です。また、委託販売の期間については、出版社から取次、取次から書店でそれぞれ委託期間が異なります。

まとめ

日本の出版業界の大きな特徴は委託販売制度です。その中でも長期委託は委託販売する期間が長く、シリーズ物や専門書に適用されています。書店に並んでいる本のどれが長期委託された本なのか注目してみましょう。