当記事では時限再販制度の意味、メリット、必要とされる理由を紹介します。

時限再販制度とは

時限再販制度とは、一定期間経過した本を書店が値引きして販売できる制度のことです。

出版業界は再販制度(再販売価格維持制度)を採用しており、出版社の決めた定価で書店は本を販売しなければいけません。しかし、再販制度には多くの問題点があるため、新しい制度の導入が議論されています。その中で注目を集めているのが時限再販制度です。

時限再販制度では、本が発売されて一定期間が経過した後は、定価に縛られずに書店は自由に値下げをして本を販売できます。海外の(再販制度を導入している国の)一部では、発売半年から2年経過後、書店が自由に価格を変更できる仕組みを持っています。日本のように本の販売価格を一切変更できない国は珍しいとされています。

時限再販のメリット

時限再販制度を導入することで書店は本を安売りできるようになります。新刊本は発売日から時間が経つほど需要が減少するケースが大半です。従来の再販制度では、ブームを過ぎた本を値下げできませんでした。時限再販制度を採用すれば、一定期間が過ぎた本を安売りできるため、売れる可能性は高まります。

日本の書店は、出版社から本の販売を委託されているのが一般的です。委託販売では一定期間が過ぎて売れ残った本を出版社に返品できます。出版社にとって、書店からの返本率を下げることは大きな課題です。時限再販制度を取り入れて、書店が在庫を安売りし、売れるようになれば、結果的に出版社に返品される本を減らせます。

時限再販制度は、書店にとっても、出版社にとってもメリットのある制度です。

時限再販制度が必要とされる理由

時限再販制度が必要とされる理由は日本の出版業界における返本率の高さです。返本率は4割程度と言われ、書店で販売される本の多くが出版社に返品されています。

日本の書店の返本率が高いのは、再販制度が足かせとなっているためです。再販制度により、書店は旬を過ぎた本を自由に値下げできず、売れ残りが生じます。返本のためのコストはすべて出版社が負担しなければいけません。(原則出版社負担です。全書店の全てのケースとまでは言い切れません。)出版社の負担が大きいため、返本率を下げることは大きな課題とされてきました。

そこで、返本を減らすための解決策として注目されているのが時限再販制度です。従来の再販制度を見直して、時限再販制度を取り入れることで返本率を下げられると期待されています。

時限再販制度の対象は?

現在の議論では、時限再販制度の対象とするのは雑誌も含め、すべての書物です。
ただし、実際に何を安売りするかは書店と出版社側が判断します。書店においてどの書物が時限再販制度の対象になるのかは契約内容により決まるため、ケースバイケースです。

部分再販とは

部分再販とは、新刊発売時から出版社が小売価格を拘束しない販売方法のことです。たとえ再販契約を締結していたとしても、部分再販の対象となる書物については非再販として扱われます。(例を挙げると、ある出版社が小説Aは定価1000円とし、書店でも1000円で販売することを指定し、小説Bは定価1000円だが、書店は900円でも1100円でも販売可能な状態にする。このような対応を部分再販と言います。)

部分再販では、出版社側で再販する本と安売りを認める本を自由に決めることが可能です。再販制度を疑問視する声が上がったときに、一部の書籍を再販制度の対象外にする部分再販という考え方が生まれました。

部分再販は新刊発売時から定価以外での販売を認めています。一方、時限再販制度の場合は、一定期間までは再販扱いで、一定期間後に価格拘束が解かれる点が部分再販との違いです。

部分再販について詳しくは、部分再販とは?部分再販を選ぶメリット、時限再販との違いを参照してください。

まとめ

日本の出版業界は再販制度が長年問題視されてきました。再販制度の問題を解決するために時限再販制度が必要とされています。物流問題を背景に、今後は再販制度への議論や新しい取り組みがより活発になっていくでしょう。