出版業界の中で重要な役割を果たしているのが取次です。本記事ではその取次と名の付く協会「日本出版取次協会」について紹介します。
日本出版取次協会とは
日本出版取次協会とは、日本の出版取次会社による業界団体のことです。日本出版取次協会は、取次会社が抱えているさまざまな問題の解決を行っています。2024年4月時点では18社が日本出版取次協会の会員です。
日本には出版四団体と呼ばれる業界団体があります。出版四団体の名称は以下の通りです。
- 日本書籍出版協会
- 日本雑誌協会
- 日本出版取次協会
- 日本書店商業組合連合会
日本の出版業界において出版取次の果たす役割は大きく、多くの取次会社が存在するため、日本出版取次協会は重要な存在といえます。
日本出版取次協会の経緯
日本では戦時中に出版物配給統制機関として日本出版配給株式会社が活躍していました。しかし、昭和24年になると日本出版配給株式会社は解散します。その後は、多くの出版取次会社が誕生しました。しかし、取次会社の間で争いが生じてしまい混乱した状況になります。そこで、取次会社同士で話し合いの場がもたれるようになり、お互いに協力する体制を目指すことになりました。
1950年には取次会社の代表が集まって出版取次懇話会が発足しました。その後は業界内外において連絡交渉をする重要な役割を担い、昭和28年には社団法人になります。昭和31年になると日本出版取次協会と改称されて、取次業界を代表する団体になりました。平成24年からは公益法人制度が改革されたことによって「一般社団法人日本出版取次協会」になります。
現在でも日本出版取次協会は取次会社の抱える共通の問題を解決するために尽力しています。
日本出版取次協会の主な会員
日本出版取次協会の主な会員を以下にまとめました。
- 日販
- トーハン
- 楽天ブックスネットワーク
- 日教販
- 中央社
2024年4月時点で日本出版取次協会の会員は18社となっています。
トーハンは出版取次において日販とともに2大大手として知られています。1949年に設立されてから長い歴史のある会社です。
日販は日本出版販売株式会社のことです。1949年に創業してから現在まで出版取次の最大手として活動しています。
楽天ブックスネットワークは、出版取次をしていた株式会社大阪屋栗田が楽天の小会社となり、現在の社名になりました。日教販や中央社も日本の出版取次で上位の売上を誇る会社です。
日本出版取次協会の主な働き
日本出版取次協会が取り組む主な事業は以下の通りです。
- 読書推進・出版物普及についての研究
- 出版物の国会図書館への納本についての業務
- 全国書店における読み聞かせ会の開催
- 出版物流通についての国際交流の推進
- 各種研究会・協議会・講演会・懇談会の開催
出版物取次販売事業に関する情報収集や調査研究や出版文化向上のための活動などが日本出版取次協会の主な取り組みとなっています。
日本出版取次協会では毎年全国の書店において読み聞かせ会を開催しているのが大きな特徴です。本の楽しさを子どもたちに伝えるための試みとなっています。親子を対象として、書店で読み聞かせや紙芝居、手遊びなどを行い好評です。
取次業界の将来性
日本の出版業界において取次業界は欠かすことができない存在ですが、出版業界全体が右肩下がりの中で取次業界も危機的な状況に陥っています。近年はアプリや電子出版などが登場し、書店で紙の書籍を買う人が減っているため、出版業界全体が低迷しているのが現状です。実際に紙の書籍を買う人が増えてくれなければ、取次業界の将来性は危ういものになるでしょう。また、取次を介さずに直接出版社から本を仕入れるケースが増えている点も、取次にとっては大きな課題です。
まとめ
出版取次の発展をサポートするための重要な業界団体が日本出版取次協会です。さまざまな働きを通して出版文化の向上に寄与しています。しかし、出版業界が低迷していく中で出版取次の将来性が危ぶまれているため、日本出版取次協会の今後の活動は重要性を増していくでしょう。