本記事では出版業界特有の延勘について取り上げます。

延勘とは

延勘(のべかん)とは、仕入れ代金の支払期限を繰り延べることを言います。

主に高額商品において採用される方式で、書店は通常の支払期限よりも数ヶ月遅れた時期までに支払えば良く、資金繰り面で書店にとってプラスの仕組みです。

よく使われるのが三延(さんのべ:支払いを3ヶ月延期する)です。たとえば、3月に仕入れて4月末が支払期限だった場合、三延であれば7月末が支払期限になります。

延勘のメリット

延勘のメリットは、支払いを延期することで書店のキャッシュフローが改善する点です。たとえば、書店が豪華装丁の図鑑シリーズをセットで仕入れたとします。シリーズが数十種に及べば、仕入れ代金も高額になり、書店の負担は大きいです。

そこで、延勘を利用し支払期間を延ばします。仕入れた商品は順次売れ、売上代金が入ります。支払いまでの期間が長ければ、支払い時までに期待できる売上も大きくなります。

伴って、書店のキャッシュフローは改善され、この点がメリットです。

(裏返しに、出版社にとってはキャッシュフローを悪化させるデメリットです。)

延勘の最大期間は?

延勘は通常3~4ヶ月程度です。この期間に法的なルールや業界ルールはないため、出版社や取次との話し合いによって期間を決めることができます。
極端なところ、12延(1年先)といった契約も双方が合意すれば可能です。

延勘の期間が長ければ、出版社や取次は支払いを受けるまでの期間が延びるためデメリットです。未払のリスクも伴います。
以上のことから、延勘とのトレードで他の条件が付されることが多いでしょう。具体的には、買い切り形式にすることや既刊本の大量仕入れなどとトレードです。

延勘の注意点

延勘は書店が書籍の支払いをするまでの期間を延ばせるため、書店にとって有利な契約です。そのため、延勘は多くの場合で買い切りでの契約になります。延勘で購入した書籍は返品できないという意味です。買い切りの契約だからこそ、出版社や取次にとっては延勘を認めるメリットが生じます。

書店で通常販売される書籍は委託販売であり、一定期間売れなければ出版社に返品することが可能です。買い切りであれば、出版社は確実に書籍の売上を受け取ることができメリットです。

常備寄託と長期委託との違い

書店が出版社や取次と契約する方法として常備寄託と長期委託という契約方法があります。書店のキャッシュフロー観点、セット商品の仕入れなどでは常備寄託と長期委託が近しい関係性です。それぞれについても触れておきましょう。

常備寄託とは

常備寄託とは、1年間書店に常に書籍を並べて、1年後にすべてを返品するというシステムです。出版社から無料で本を借りて書棚に並べることができます。出版社が提案したセットで本を受け取るパターンもあれば、目録から書店が選んだ本を受け取れるケースもあります。

常備寄託では、本が売れたら追加で出版社に注文をして補充しなければいけません。出版社から受け取った本をすべて常に書棚に並べることを前提とした契約です。

より詳しい仕組みについては、常備寄託とは?のページを参照してください。

長期委託とは

長期委託とは、書店に長期に渡って本を並べて販売することを前提とした契約です。一般的には半年から1年の期間が定められます。長期委託した本が売れた場合、書店側が補充するかどうか判断できるのが特徴です。常備寄託のように補充義務はありません。長期委託が終了した後、売れた分は仕入れ代金を出版社に支払い、売れ残ったものは返品します。

延勘を用いずとも、これらの仕組みを用いることで、書店内のラインナップを拡充することやフェア等を開催することも検討できるでしょう。

まとめ

延勘は書店が書籍の支払い期限を延長できる制度で、キャッシュフローを改善します。

ただし、買い切りでの契約となる場合が多く、注意しなければいけません。延勘以外にも常備寄託や長期委託といった契約方法があります。