書籍の制作工程で重要な一つが装丁デザインです。今回は装丁について取り上げます。
装丁とは
装丁(そうてい)とは、カバーや表紙、扉、帯、化粧箱など書籍の外装、またはこれらのデザインを指します。より細かく言えば、表紙やカバーに用いる紙材料を決める工程も装丁デザイン工程と言う場合があります。
古くは(約70年前では)「装釘」「装幀」「装訂」といった漢字を用いて記載していました。
装丁の目的・役割
装丁は購買意欲を高めること、耐久性を上げることが役割です。書棚に飾りたくなるような美術品とも呼べる装丁や、チラシよりも訴求力のある装丁など、各社目的や役割に応じて作成しています。
表紙紙にボール紙を挟むことで頑丈な作りになる上製本やカバー用紙で表紙をくるむことで傷から守るソフトカバーは、見た目だけでなく、耐久性を上げることに貢献しています。
装丁と装本の違い
装丁と装本は、多くの場合同義として扱われています。
細かく言えば、装本は書籍の外観部を作り上げる工程を指す場合に使われます。装丁はデザインを指すことが多いです。
装丁とブックデザインの違い
2者は異なり、分かりやすい点を挙げると、ブックデザインには本文レイアウトが含まれる点です。
装丁は書籍外側のデザインを指すことが多く、一方、ブックデザインは本文の行間や書体、余白なども含み、本全体のデザインを指します。ブックデザインの一部が装丁デザインだと考えると良いでしょう。
近年は書籍のデザイン専門家を、装丁家ではなくブックデザイナーと呼ぶケースが増えています。読者が書店で目を留めたところから、読了までの体験を総合的に作り上げるブックデザイナーという役割が分かりやすく、かつ読者視点で目的にも沿っているからではないでしょうか。
(出版業務の日常で、ここまで正確に使い分けている方は、実のところ稀だと思います。)
装丁の制作工程
書籍の装丁制作はどのような流れで進むのでしょうか。流れを簡単にまとめると以下の通りです。
- 打ち合わせ
- デザイン案の作成
- 選定
- (必要に応じて)発注
- カバー、帯のデザイン作成
- 素材選び
- 入稿
- 色校正
- 完成
編集者や制作担当と打ち合わせをし、製本の仕様・帯や化粧箱の有無、コピー案をまとめます。次に仮のデザイン案を作成します。
デザインの方針を決め、必要に応じてイラストなどの発注を同時進行で進めます。
カバー等のデザイン作成を進め、いくつかの案から選びます。書籍の素材(紙材料)選びも並行して進めます。ここまでに見返し用紙等もまとめておく必要があるでしょう。
最終版デザインの確認をし、問題なければ入稿です。色の発色を確認する場合には、色校正の工程を経ます(本機校正か否かの選択含む)。問題がなければ印刷製本を進め、完成、納品と進みます。
美しく・面白い装丁作品
装丁が美しい作品や面白い作品をいくつかご紹介します。
桜庭一樹氏「私の男」
直木賞を受賞した桜庭一樹氏の「私の男」です。こちらは有名な装丁家である鈴木成一氏が手掛けています。表紙は絵画風に男女を描いていて、背徳感が溢れてくるようであり、作品のイメージにピッタリです。
乙一氏の「失はれる物語」
小説家乙一氏の「失はれる物語」の単行本装丁は譜面が涙で滲んでいるという演出がされています。表紙から小説の内容をイメージさせ、読んでみたいと思わせる美しい装丁作品といえるでしょう。
東野圭吾氏の「白夜行」
東野圭吾の「白夜行」のブックデザインは話題になりました。黄色がベースでタイトルの文字が白色で抜けているのが特徴であり、配色にインパクトがあります。黄色の表紙の本は珍しいため、思わず手に取ってみたいと感じるでしょう。
装丁家になるには
王道の装丁家ルートは、デザインの基礎やDTPソフトスキル、フォントやタイポグラフィーの知識を学校等で学びます。その上で出版社やデザイン事務所で働くのが一般的な装丁家への道といえます。
当然ですが、就職後はアシスタント業務や装丁デザインの部分的作業から担うことも多いでしょう。徐々に広範な装丁やブックデザインに関われるようになります。実績を積み、人脈ができれば、装丁家として独立するルートもあろうかと思います。
まとめ
装丁は書籍の外装、デザインを指す言葉です。
買ってもらうには?と考え、魅力的なデザインを作ることが求められます。保存性や芸術性を重視した装丁という考え方にも触れました。書籍を作る上で装丁は欠かせない工程と言えるでしょう。
