本の価格として予価が記載されていることがあります。それでは予価とは何なのでしょうか。予価の意味や必要な理由、本の価格の決め方について紹介します。
予価とは
予価とは、予定価格のことです。これから発売される本の未決定ながら、想定している定価を言います。
また、予価には国や地方公共団体が契約をする際に契約金額の基準としてあらかじめ作成する見込価格という意味もあります。発注者が競争入札をする際に落札金額を決める基準となるものが予価です。官公庁が作成する予価については、会計法と予決令に記載があります。
予価が必要な理由
予価が必要とされる理由は、まだ製本が済んでおらず原価などが確定していないからです。本の価格は原価をもとにして決められる場合が多く、適切な価格を設定しないとコストを回収することができないためです。本の価格の目安として予価を設定しておくのですが、実際に発売する際に予価と異なる定価が設定されるケースは珍しくありません。
予価はいつ確定される?
予価についてはいつまでに確定しなければいけないという決まりはありません。出版されるまでに設定される価格はあくまでも予定価格のことであり、正式な価格ではないからです。出版物の予価について特に法的な規則があるわけではなく、それぞれの出版社が自由に決めています。そのため、出版直前になって予価が変更になることもあります。
問題集や参考書のように何度も改訂版が出される場合は、改定後に本の価格が変わるケースがあります。このような場合は、予価の段階で既に価格が変更されていることが多いです。
本の価格の決め方
本はその他の製品と同様に原価が価格を決める基準となります。本の原価となるものには、直接原価と間接原価の2種類があります。本の価格に影響を与える重要なものが直接原価です。
直接原価は以下の要素によって構成されています。
- 製版代
- 製本代
- 印刷代、紙代
- 資材費
(印税、画料、編集費、取材費、運搬費などを含める場合もあります。)
定価を決めるためには、まず直接原価を生産高で割ります。生産高とは「本の定価×部数」のことです。直接原価を生産高で割って%を求めて、印税率を足すことで本の原価率がわかります。直接原価の割合は35%程度に設定されているケースが多いです。
たとえば、直接原価が456円、原価率を33%、印税を5%とします。この場合の定価は「定価×38%=456」の式から割り出すことができ、1,200円です。定価に消費税を足すことで販売価格がわかります。
直接原価の他に間接原価も重要です。厳密に原価を計算するためには間接原価も考慮する必要があります。
間接原価を大きく分けると広告宣伝費と固定費の2種類です。固定費とは賃貸料や人件費などを指します。
(全体での売上に対する原価率は60%程度を想定して設定されるケースが多いです。)
出版社が本を発売する際は、取次を通して書店に流通するのが一般的です。本を流通する過程で取次、書店の取分も発生するため、純利益を計算する際には注意しなければいけません。
本を出版し、出版社にも利益が残ることが出版文化の維持には必要です。利益が残る定価を計算しましょう。
(取次、書店の取り分が30%強のため、出版社の計算上の利益は一桁%になります。利益率が低いこともあり、売れ行きが想定を下回ると赤字になるということです。)
まとめ
本の価格には予価と定価があります。予価は発売前に発表される価格であり、定価とは異なるものです。予価の段階ではまだ本の価格が確定していないため注意しましょう。本の実際の販売価格が確定するのは、本が発売された段階です。今後は本の予価と定価の違いを意識してみましょう。