今回は「絶版」をテーマに、定義やその背景をまとめます。
絶版とは
絶版とは、ある書籍を追加で印刷製本せず既存在庫がなくなり次第、終売とすることです。追加の印刷製本を重版(出版物を刷り直すこと、再販とも呼ばれる)と言いますが、これをしないことです。
出版社の原則的な間が方は、今後も引き続き売れ行きが見込める書籍は重版します。
今後の売れ行きを見込めない場合には絶版として扱われるケースがあります。
絶版になると、在庫分がなくなり次第、購入できなくなります。そのため絶版された書籍は、古書店で絶版本として高値で販売されるケースが稀にあります。
絶版となる理由
絶版になる理由はいくつかあります。以下では絶版になるよくあるケースについて説明します。
売上が低迷しているため
販売部数が伸びず、低迷している場合は一つです。ここでの部数に関する考え方は、印刷部数の単位と関係します。仮の数字で、年間で見込める売上部数が50部、印刷は1000部単位で行うとします。粗い試算では、追加印刷した在庫を売り切るのに20年かかります。
こういったケースで、出版社は出版権を放棄して絶版にします。
ただし、別の出版社が出版権を獲得して復刊されるケースも珍しくありません。
著者の意向によるもの
著者の意向によって出版物が絶版されるケースは珍しくありません。
たとえば、小説家の高村薫氏は文庫化の際に小説の内容を大幅に改稿して改訂版を出すことを主義としています。そのため、改訂版を出す際、同時に既刊本を絶版としています。
少女漫画家である内田善美氏は断筆して漫画家を引退する際に、すべての単行本を絶版にしました。1984年に活動を終了してからは既刊作品の再販は実施されていません。そのため、中古市場では絶版された単行本がプレミア価格で取引されています。
出版社による問題
出版社が倒産したことで絶版になるケースがあります。出版社が倒産すると著者・出版社間の契約は解約されることが一般的です。出版権を持っていた出版社が消滅すれば、同社が出版権を持っていた全ての書籍は絶版になります。ただし、他の出版社が出版権を引き継げば、新たに販売されるケースがあります。
書籍意外の影響
テレビ番組と連動した企画、書籍であれば、テレビ番組の終了や企画中止に伴い絶版とするケースがあるでしょう。
他にも、作者の不祥事によって絶版になるケースもあります。たとえば、作者が逮捕されて漫画連載が打ち切りになり、単行本が絶版になった事例があります。テレビ番組が不祥事で打ち切りになり、関連書籍が絶版になったケースもあります。
絶版になると二度と手に入らない?
絶版となり、在庫がなくなった書籍は中古流通内から手に入れるほかありません。
ただし、単行本は絶版にするが、オンデマンド印刷や電子書籍で引き続き読めるケースがあります。
たとえば、AmazonPODを用いて、1冊から印刷製本し届ける方法です。
絶版本をPODサービスで復活させたり、電子書籍で配信開始したりする出版社は増えています。絶版本にも一定の需要が存在しているからです。オンデマンド印刷や電子書籍であれば、出版社には印刷や流通などのコストがかからないため、積極的に対応している出版社が出てきています。
廃刊とは
廃刊とは、定期刊行を終了した雑誌のことを指します。従って、雑誌以外の書籍は廃刊と呼ばれることはありません。絶版と似た言葉ですが、意味は異なります。
雑誌の廃刊は、休刊と異なり復活しないことを意味します。雑誌が廃刊される際には雑誌コードを返上しなければいけません。一度返上すると雑誌コードの再取得は難しいため、通常は雑誌の復刊の目処がなくても休刊とするケースが多いです。
まとめ
売上の低迷や著者の意向などにより書籍が絶版になるケースがあります。近年はオンデマンド印刷や電子書籍などで再び読めるケースが増えてきました。今後は絶版した書籍も楽しめるようになるかもしれません。
