ご自身の本を出版したい方の中には、自費出版を検討している方も多いでしょう。しかし、自費出版によるトラブルの話を聞いて躊躇している方がいるかもしれません。本記事では自費出版の問題点やトラブルについて詳しく解説します。
自費出版に関する問題点
自費出版には問題点やデメリットがあります。事前にこれらを知っておくことでトラブルを避けられるでしょう。それでは自費出版に関する問題点を紹介します。
想定通り書店配本、陳列がされない可能性
自費出版を出版社に依頼する際には、流通まで担当してくれるケースがあります。しかし、出版社が流通を担当してくれる契約でも、実際に本が陳列されないケースもあります。
一つは、希望数量が配本されないケースです。昨今の物流問題もあり、返本率を下げる目的から新人作家の作品は委託配本を絞る傾向にあります。このため、希望数を下回る冊数しか配本されない場合があります。
次に、実際に書店まで自費出版本が届けられたとしても、それを陳列するかどうかは書店が決めることです。書店員は売れる可能性の高い本を優先的に陳列します。そのため、書店に搬入されたとしても、一度も陳列されない書籍も中には存在します。
出版社が自費出版本の流通を約束してくれたとしても、最終的に書店の本棚に本が並ぶかどうかは書店員次第となります。出版社のサポートを受ければ必ず書店に自費出版本が並ぶと考えるのは避けましょう
(出版社が棚を買う、ワゴンを買うなどして陳列量を担保しているケースもありますから、全てのこの限りではありません。)
費用が高額になる可能性
出版社の提供する自費出版サービスを利用する場合、費用が高額になる可能性がある点に注意してください。たとえば、基本料金が安かったとしても、さまざまなオプションをつけることで費用が高額になる場合があります。本の品質や装丁などにこだわるならば、費用は高額になりやすいです。
また、出版社の中には非常に高額な料金体系の会社もあります。特に大手の有名な出版社の場合は、かなり高額な費用であることが多いです。大手出版社に依頼すれば、豊富な実績とノウハウがあり、流通まで確約してくれるケースが多いです。充実したサポートを受けられるのですが、その分だけ大手出版社の費用は非常に高額になります。
出版社によって自費出版のサポート費用は千差万別なため、見積もりを取り、比較することが大切です。
本の内容・品質が低いまま完成する可能性
自費出版は原則、第三者の権利侵害さえなければ、自由に書き自由に発表することができます。著者が出したい本を出せるのが自費出版の大きなメリットです。
ただし、公序良俗や差別的思考などが含まれると書籍が問題視される可能性があります。編集無しで自費出版本を作ると、表現などに問題が生じる場合があり、この責任者は当然著者が負うことになる点は注意が必要です。
また、編集無しで本を作ると、内容や品質が低いまま完成するリスクがある点にも注意しましょう。他の出版方法の場合、出版社の編集者が編集作業を担当するため、高い品質を実現できます。この点が自費出版との違いです。
売れない可能性、売れ残り在庫の問題
無名の著者が出した自費出版本は多くの場合、さほど売れない可能性が高いです。書店に本を陳列できたとしても、手にとってもらえない場合が多いです。
本が売れなければ、費用を回収することができずに大きな赤字になる可能性があります。また、売れ残った在庫は著者のもとに帰ってくる点にも注意しましょう。この程度売れるだろうと楽観的に考えてしまい、多くの本を印刷するケースがあります。多くの在庫を抱えてしまうと、売れ残った本をどのように処分すればいいのか困ることになるでしょう。
出版社の契約内容そのものが悪質な可能性
自費出版のサポートをする出版社の中には、出版詐欺とは言わないまでも、悪質な行為をする業者も含まれる点に注意しましょう。極端な例で言えば、相場よりも高額な費用を提示し、費用を受け取りながら、出版に至らないケースです。
(大げさな話ではなく、悪意の有無は不明ですが、費用だけ取られ出版に至らなかった著者様からのご相談は時々いただきます。多くの場合、制作過程で出版社が倒産・廃業されるようです。)
また、大手出版社と契約したとしても、トラブルが起きるケースがあります。契約内容について、言い分が食い違うケースです。希望とは異なる内容の契約を結んでしまい、後悔する場合もあります。たとえば、自費で出版したけれども、出版社が本の所有権を持つ内容で契約してしまったというケースです。
出版社との契約に関するトラブル具体例
出版社との契約についてトラブルの具体的な例を紹介します。
契約時よりも費用が高い
契約の際に提示された費用よりも、最終的に請求される費用が高いケースがあります。たとえば、最初に提示されたプランに含まれない工程があり、後で追加費用を請求されるケースです。事前に説明のない項目について後で追加費用を請求されたというケースもあります。
大半の出版社は、契約内容にない作業を依頼された際や、仕様変更を希望された場合には、請求額が変わる旨とその見積額をお伝えします。
本が書店に並ばない
相談した際には絶対に書店に本を並べると確約したが、実際には書店に並ばなかったというケースがあります。
大半の書店では、陳列をどうするかはジャンル担当の書店員が決めることです。そのため、必ず書店に本が並ぶと言われても鵜呑みにするべきではありません。
(数百部を配本し、1冊も並ばないことはまずないでしょう。逆の言い方をすれば、配本した部数すべてが陳列されることも稀でしょう。)
宣伝されない
自費出版本の宣伝をしてくれるという約束だったのに、本の宣伝活動をまったくしてくれないというケースがあります。
宣伝の種類や程度はありますが、多くの出版社で、宣伝は追加申し込みを必要とするサービス扱いです。新聞広告もWEB広告も広告費がかかる作業ですから、無料の宣伝サービスについては期待しないことが望ましいでしょう。
まとめ
自費出版本を出すために出版社と契約する際には、さまざまなトラブルが起きる可能性があります。たとえ大手の出版社でもトラブルになる場合は少なくありません。事前に信頼できる出版社に相談をし、契約内容を隅々まで確認することが大切です。