自費出版を個人でした場合、会社でした場合、本が売れた場合と売れなかった場合を想定し、会計処理について解説します。
自費出版は経費にできる?
自費出版で本を出版したときの費用を経費にできます。自費出版をして本を販売したならば、所得が発生するからです。所得には必要経費を算入できて、売上から経費を差し引いた金額が所得になります。多くの経費を計上できれば所得を下げて税金を抑えられるのです。
自費出版の勘定科目
自費出版で経費を計上する際の勘定科目について説明します。
勘定科目
自費出版の必要経費は仕入れとして計上します。宣伝にかかった費用は広告宣伝費です。本が余った場合は棚卸資産として計上します。
また、自費出版が本の売上を上げる目的ではなく広告を目的にした場合は、必要経費を広告宣伝費として計上すると良いでしょう。
制作にかかる委託業務費用、具体的には編集費用やデザイン費用は外注費として処理し、印刷製本費用のみを仕入れ、書籍の配送にかかる費用は「通信費」「荷造運賃」に分類することもできます。見積もりの段階で費用が分解できない場合には全てを仕入れにすると良いでしょう。
完成した本は販売予定がなく、無償で配布する用途であればカタログなどと同様に印刷費や広告宣伝費として計上しましょう。
費用を先払いした場合は?
たとえば、出版社と契約して自費出版する際に必要経費を先払いするケースがあります。この場合は、前払金として資産計上し実現した時点(納品された時点)で費用計上すると良いでしょう。
副業とした場合の勘定科目
副業として自費出版した場合の本の売上は雑所得として扱います。会社員など本業のある人が行う副業は、原則雑所得扱いです。事業所得とするかの一つの判断材料は年300万円の売上があるかで考えると良いでしょう。
自費出版の売上は確定申告は必要
自費出版で本が売れて売上が発生した場合は確定申告が必要です。自費出版の確定申告の条件について解説しましょう。
確定申告の条件
確定申告の条件を詳しく解説します。
個人事業主として出版した場合
個人事業主の場合は事業所得として確定申告をします。そして、事業所得には基礎控除として48万円が設定されているのが特徴です。したがって、個人事業主は所得が48万円を超えると確定申告する必要があります。
かつて、個人事業主の基礎控除は38万円だったのが、2020年からは所得金額合計が2,400万円以下の場合に基礎控除48万円適用されるようになりました。そのため、以前とは異なり現在は所得48万円未満の場合は個人事業主で確定申告が不要になります。
確定申告の基準となる所得とは、売上から必要経費と基礎控除を差し引いたものです。たとえば、以下のケースでは確定申告する必要はありません。
- 売上50万円
- 必要経費10万円
- 事業所得 50万円-10万円-48万円(基礎控除)=-8万円
基礎控除を差し引いて事業所得が1円を超えれば確定申告の必要があります。
副業として出版した場合
副業として自費出版した場合は、言い換えれば会社員として毎月お給料をもらっている状態に本の売上が乗ってきた場合です。
この場合は所得が20万円未満の場合に確定申告が不要になります。副収入すべてを含めた所得で判断するため注意しましょう。たとえ、自費出版による所得が20万円を超えていなくても、他の副業の所得と合算して20万円を超えた場合は確定申告が必要です。
たとえば、以下のケースでは確定申告をしなければいけません。
- 自費出版の売上 19万円
- 自費出版の必要経費 5万円
- その他の副業の所得 10万円
- 副業の所得 19万円-5万円+10万円=24万円
自費出版以外の副業の事例として、アフィリエイト収入やフリーマケットの利益、オークションでの利益、クラウドソーシングでの収入などがあります。
確定申告をしないとどうなる?
確定申告が不要な所得の場合、申告をしなくても特に問題ありません。しかし、確定申告の条件を満たしている場合は、申告をしなければ罪になります。
確定申告をしていない場合は罰則として無申告加算税が課せられるルールです。無申告加算税は納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じた金額が罰金として課税されます。また、税金を延滞していた場合は延滞税も課せられるのです。
悪質なケースでは刑事罰の対象になるため、必ず確定申告をしましょう。
確定申告のやり方
確定申告の方法は期限までに税務署に確定申告書を提出することです。副業として申告する場合は、確定申告書Aと源泉徴収票を提出します。
事業所得として確定申告する場合は、確定申告書Bと収支内訳書(あるいは青色申告決算書)を提出しなければいけません。
また、確定申告の際にはマイナンバーカードと本人確認書類が必要です。
確定申告の期限は進行年度の翌年の3月15日までとなっています。
何が経費に含まれるの?
自費出版をするのに必要になった費用はすべて経費に含まれます。経費の事例は以下の通りです。
- パソコンやソフトの購入費用
- 電気代
- 家賃
- 交通費
- プロバイダの料金
- 出版社への依頼料
注意点は自費出版に関連する費用のみを計上できる点です。たとえば、電気代の場合はプライベートの費用も含まれているため按分する必要があります。自費出版のために利用した分のみを計上します。1日に6時間自費出版の作業に費やしたならば、24時間のうち6時間分の電気代のみを計上します。
また、必要経費はすべて根拠が必要であり、証拠となる書類も用意しなければいけません。領収書や請求書、クレジットカードの明細などは保管しておきましょう。
在庫の棚卸し
前述の経費のうち、書籍(つまり商品)の制作にかかった費用は、発生時に全額経費にできますが、期末時点(個人の副業であれば、12月末)で保管する在庫を棚卸しし、棚卸し資産に計上する必要があるでしょう。
制作費(編集代行費、デザイン費、印刷製本費など)が100万円だとし、100冊製本し、年末50冊残っている場合、50万円相当の在庫を計上するといった具合です。
自費出版の制作費用
自費出版の制作費用は、印刷する部数とページによって大きく異なります。たとえば、50ページ程度の書籍を50部程度の部数で自費出版する場合は、10万円台の費用になるでしょう。200ページ程度の書籍を200部程度の部数で自費出版する場合は30万~40万円という費用がかかります。
また、上質な紙を使った場合は費用が高いです。ペーパーバックではなくハードカバーでしっかりとした素材を活用した本を出版する場合も費用は高くなります。
事前に出版社とよく相談をして見積もりをもらい、他社との比較が大切です。
まとめ
自費出版をする際には確定申告しなければいけないケースがあるため注意しましょう。きちんと経費を計上して税金を抑えることができます。会計や税務の正しい知識を持った上で自費出版を進めることが大切です。