自費出版は赤字になりやすいとされています。あまり儲けを期待できないのが自費出版です。本記事ではなぜ自費出版が赤字になりやすいのか理由をみていきましょう。

なぜ自費出版本は赤字になりやすいのか

自費出版が赤字になりやすい理由を説明します。

費用が割高なため

一般的な自費出版にかかる費用は、編集やデザインにかかる人件費、印刷製本にかかる費用のほか、出版社の利益を含めた金額になっています。

利益のでない価格設定にすると、管理費や広告宣伝費を支払えませんから、事業として当然でしょう。

商業出版の場合、出版社は「売れたら」利益がでる構造です。つまり商業出版と比較し、自費出版は費用が割高になりやすいと言えるでしょう。

売上に繋がらない費用が発生しやすいため

仕様(製本、紙材など)のうち、売上への影響はない(またはほぼない)点に費用をかけているケースを目にします。

費用をかけることで、上質で美しい書籍に仕上がりますから、無駄とは言えません。自費出版だからこそ、こだわりを存分に詰め込んだ作品にすることも良いと思います。

儲けを出す点に注力する場合、定価に反映できないこだわりや売上増に繋がらない仕様へ費用をかけることは避けましょう。

本が売れないため

ひとつは、書籍業界全体のお話ですが、本が売れません。10年前、20年前と比較すると非常に本を売ることは難しくなっています。

もう一点に、商業出版としては採算が合わないだろうと判断された作品だが、世に届けたいとの思いから自費出版を選択されるケースは多いです。ほかにも出版社に味付けされることを嫌い、書きたいものを書くために自費出版を選択されるケースもあります。

ニッチな領域の作品など、そもそも部数が伸びにくいものもあり、売れないことが悪い訳ではありません。

シンプルに売り上げ部数だけを見ると、上記のような背景から自費出版書籍は相対的に売れ行きが良くないと言えるでしょう。

自費出版本は何冊売れば黒字になるの?

たとえば、自費出版サービスを利用し、100ページの本を100部作って10万円かかったと仮定します。

この場合は出版社と著者で売上を配分することになります。仮に著者が得られる利益が50%の場合は、1,000円の本が1冊売れると500円が入ってきます。100冊すべてが売れたとしても、著者の手元は5万円にしかなりません。1,000円という価格設定では赤字になります。(正確には50%が出版社の利益になるものではなく、35%程度は書店と取次店に支払い、数%程度を配送コストとし支払い、残る数%が出版社の利益になります。ただし、売れ残りが多かった場合、返本時の配送コストが余分にかかり、出版社は利益がでず、持ち出しになる場合があります。)

黒字になるかどうかは単純に本の売り上げ部数だけではなく、価格設定も大事です。仮に上記の条件で本の価格を2,001円にすると、100冊すべて売れた場合の著者の取り分は10万50円であり、費用を差し引いて50円の利益になります。(ここではシンプルにするため、税金のお話などは簡略化しています。)

上記のように出版は利益を得ることがとても難しく、費用を回収することも困難なケースが多いです。

詳しくは、次の記事を参考にしてください。

自費出版本の損益分岐点は何冊から?価格設定は?売るためのポイントも紹介

自費出版を黒字にするには

自費出版を黒字にするためにはどうすればいいのか対策を紹介します。

自費出版の費用を減らす

まずは支払うものを少なくすることで、損益分岐点を下げましょう。

いくつもの出版社に相談し、見積り額を比較することは大前提として、それ以外の自費出版の費用を減らすための方法を紹介します。

書籍の質を下げる

書籍の質を下げることによって費用を抑えられます。これは原稿の品質ではなく、製本等の質を指します。

たとえば、文字サイズを小さくし、ページ数を減らします。カラー印刷ではなくモノクロ印刷にします。上製本ではなく並製本にし、紙材も安価なものを選択することも費用を抑えます。

(上製本はハードカバー、並製本はソフトカバーがついた書籍を言います。)

完全データ入稿する

完全データ入稿とすることでデザインや組版にかかるコストを抑えられます。完全データ入稿とは、完成した書籍の印刷用データを出版社に提出する方法です。

ご自身でInDesignやillustratorでデータを作成するため、作業難易度は高いです。印刷できる状態に完成させてから入稿するため、完全データ入稿では出版社の作業は非常に減ります。そのため費用をカットできます。

最適な印刷方法にする

印刷方法を大きく分けるとオンデマンドとオフセット印刷の2種類があります。最適な印刷方法を選ぶことで費用を抑えられるでしょう。

オンデマンドは版を使わずに印刷する方法で、少部数に相性が良いです。通常は出版社が最適な印刷方法を選択するため、任せると良いでしょう。

流通費用を抑える

販売を書店に限定せず、ご自身で手売りなどすることで全体費用を抑えます。

たとえば、ご自身でECサイトを設けて販売することやセミナー会場などで手売りする方法です。

自費出版本の販売数を増やす

自費出版本の販売数を増やすための方法を紹介します。

書籍を宣伝する

積極的に書籍の宣伝をすることで販売数を増やせます。宣伝方法には新聞広告、交通広告、SNSやブログ、口コミなどがあるため、最適な方法を選びましょう。複数の宣伝方法を組み合わせることで相乗効果を期待できます。

販売ルートを増やす

自費出版本は書店での販売以外にも直接販売やネット通販などさまざまな方法があります。販売ルートを増やすことで販売数を増やせる可能性を検討しましょう。ただし、ルートを増やすほど在庫が必要になる点は注意が必要です。

電子出版なら赤字になりにくい

自費出版本で赤字を避けたいならば電子出版も検討しましょう。電子出版とは電子書籍の出版を指し、紙の書籍ではなくデータを配信します。電子出版の場合は印刷する必要がないため、印刷費をカットできるのがメリットです。出版費用を抑えることができ、なおかつ在庫を抱える心配がなくなります。

自費出版は経費にすることもできる?

自費出版にかかった費用を経費にできるケースがあります。たとえば、仕事の宣伝や資料にすることを目的に作成したケースです。事業と関連のある目的で自費出版をする場合は、出版にかかった費用を経費として計上できます。所得から経費を差し引くことができるため、税金を抑える効果を得られ、実質費用負担を軽減できるでしょう。

自費出版の成功例

自費出版で大ヒットを記録した成功例がいくつかあります。たとえば、「リアル鬼ごっこ」です。山田悠介氏のヒット作であり、著者が高校卒業後に自費出版をしてデビューを果たしました。累計で200万部を超えるベストセラーになったそうです。

「氷の華」は天野節子氏が60歳の時、自費出版により発表したデビュー作です。テレビドラマ化もされており、自費出版からメディアミックスを勝ち取りました。

成功例の裏にはその数百倍、数千倍の失敗事例があることに留意しましょう。

赤字でも出版することに意味があるか

そもそも自費出版の目的は何かを考えましょう。利益を得ることが目的のケースもあれば、会社の宣伝やイベントの記念などで自費出版が行われるケースも多いです。

利益とそれ以外の目的のバランスをとることが大切です。

まとめ

自費出版で利益を得る事は難しい点をご紹介してきました。電子出版を選んだり、本の質を低くしたりすることで費用を抑えることは可能です。ただし、そもそも自費出版をする目的からかけ離れることがないよう注意も必要です。