本記事では版元の意味や、発行元と発行所の違いなどについて紹介します。

版元とは

版元とは、本の版をもっている事業者や事業所のことです。基本的には出版社を指します。

版とはもともと印刷版のことであり、本を印刷するために使われるものです。現在主流とされている印刷技術であるオフセット印刷では、印刷版からラバーブランケットに転写されることで印刷の工程が進みます。

現在は版を必要としない印刷方法としてオンデマンド印刷があります。オンデマンド印刷は書籍のデータをもとに版を作らずに印刷する方法です。電子データを直接配信する電子書籍も普及しています。これらのオンデマンド印刷や電子書籍であっても、出版元である出版社が版元であることは変りません。

現在の版の意味は、印刷版のみを指すのではなく、書籍のデータも含めたものと考えられます。

発行元と発売所の違い

本の奥付を見ると発行元と発売所という2つの表記がされているケースがあります。たとえば、発行元が「◯◯出版社」であり、発売所が「✕✕社」であるケースです。発行元と発売所が分かれているのは、本の流通に関係しています。

日本の出版業界では、出版取次を経由して書店に本を流通させるのが一般的です。しかし、すべての出版社が取次と契約があるわけではありません。そこで、発行元の出版社が、取次と契約のある発売元に本を委託します。

発売元は取次との契約があり、取次との口座を開設しているため、全国の書店に流通させることが可能です。発売元は取次に手数料を支払うことで書籍を流通させます。

取次との契約がない出版社は、自力で全国の書店と契約をしなければいけません。出版社が直接書店と取引をするのは大幅なコストがかかるため、小さな出版社には難しく、そのため、出版社の中には、別の出版社に本を委託して書店に流通させている出版社もあります。

版元の調べ方

通常、書籍の奥付には版元が記載されています。現在、奥付に何を記載するのか法規制は存在しませんが、流通を管理する取次によって、載せる必要がある情報は決められています。書店に流通している書籍であれば、奥付には版元がしっかりと記載されています。

また、版元ドットコムを利用して版元を調べることも可能です。版元ドットコムはさまざまな書籍の情報を登録したデータベースであり、版元や署名、著書名、目次などの情報が公開されています。

版元が変わることってあるの?

版元が変わるケースは少なくありません。たとえば、単行本で出された小説が、後に文庫本で出版される際に版元が変わるケースがあります。

本を出す際に著者は出版社と契約を交わしますが、単行本で本を出すのと、文庫本で本を出すのは、それぞれ別々の契約になります。著作権は常に著者が有しているもののため、どこの版元から本を出すのかを著者が最終的に決めることができます。

版元が変わったからといって、必ずしも著者と出版社の間でトラブルが起きたわけではありません。たとえば、単行本を出す際に最初から文庫本は別の出版社で出すと約束しているケースなどもあります。

版元である出版社が倒産したことで、版元が別の出版社に移るケースもあります。

まとめ

版元は本を印刷するための版をもつ事業所や事業者を指します。基本的には版元は出版社のことだと考えれば良いでしょう。版元によって、書籍が印刷されて、全国の書店に流通します。