出版業界の低迷が続く中で漫画の売上は伸びています。それでは、漫画は今後の出版業界の救世主になるのでしょうか。出版業界における漫画の市場の割合や将来のことについて紹介します。

出版業界の現状

出版業界の現状は悪いです。ピーク時と比較すると出版物の売上は半減しており、右肩下がりを続けています。特に紙の書籍と雑誌の売れ行きが悪いです。雑誌は廃刊が続いており、売上が急激に減少しています。紙の書籍も徐々に売上を減らしているのが現状です。

近年における漫画の売れ行き

出版業界が全体として売れ行きが落ちている中でも好調になっているのが漫画です。近年は「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」といったヒット作が出ており、漫画の売上は向上しています。「ワンピース」など長期連載されている作品の売れ行きも好調であり、出版市場における漫画の存在感は高まっています。漫画の売れ行きが出版市場そのものの在り方に大きな影響を与えています。

出版市場における漫画の割合

現在、出版市場(電子書籍含む)において漫画のシェアは4割を超えています。2021年におけるコミック市場は6,759億円であり、前年比10.3%の増加を記録しました。

(2022年は6,770億円で微増)

2021年にコミック市場が伸びた理由は「鬼滅の刃」がブームになったことと、「呪術廻戦」や「東京リベンジャーズ」といった作品が大ブレイクしたことが要因です。Web連載やマンガアプリでは次々とヒット作が生まれており、コミック市場を盛り上げています。

また、近年徐々に売上を伸ばしている電子出版は売上のほとんどが電子コミックです。2021年における電子コミックの売上は4,114億円であり、前年比20.3%の増加となりました。

「縦スクロールコミック」という電子コミックならではの試みも生まれており、これまで漫画を読んでいなかったユーザーの掘り起こしにも成功しています。

クロスメディアによる売り上げへの影響

クロスメディアによって出版業界の売上が伸びるというケースがあります。たとえば、「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」といった人気の漫画作品がアニメ化されたことで、書籍の売上にブーストをかけました。漫画は他のジャンルの書籍と比較するとクロスメディアとの相性が良いです。今後はクロスメディアによる展開がしやすい漫画が、出版業界における稼ぎ頭になると期待されています。

スマホアプリによる新しい売り方

近年はスマホアプリによる書籍の販売が増えています。スマホで電子書籍として漫画を読む時代であり、スマホで気軽に漫画を購入して読める環境が整っているのです。

集英社と小学館、講談社という3大漫画週刊誌を持つ各社もスマホアプリに進出しています。たとえば、集英社では少年ジャンプの電子版として少年ジャンプ+というアプリを展開しており、多くのダウンロード数を記録しています。小学館ではマンガワンというアプリを提供しています。講談社ではマガジンポケットなど複数のスマホアプリを展開しており、順調に売上を伸ばしています。

また、漫画のアプリについては出版社だけではなくIT企業も続々と進出しています。たとえば、LINEはLINEマンガというアプリを展開しており、多くの方に利用されているのです。

海賊版による懸念

出版業界を支えている漫画にとって懸念されている問題が海賊版です。昔から漫画の海賊版は問題視されており、特にインターネットが発達したことで海賊版の被害は深刻化しています。

たとえば、平成25年度の経済産業省の調査によると、漫画の海賊版の被害は日本で500億円と試算されました。かつて存在した海賊版サイトの漫画村による被害額は3,200億円とされています。

海賊版は漫画のコンテンツをタダで読まれてしまい、本来購入されるはずだった漫画の売上が損失するのが大きな問題です。出版社は積極的に訴訟や削除要請など法的措置を進めています。

ただし、海賊版のサイトの多くは海外に存在しており、日本からでは対処が難しい点が問題視されていました。そのため、今後は国を巻き込んで国際連携を進めていき、海賊版の撲滅のための対策を急ピッチで進めていくことが求められています。

出版業界を題材にした漫画の紹介

出版業界を題材にした漫画はこれまでにたくさん発表されています。その中でも代表的なものは以下の通りです。

  • バクマン
  • 重版出来
  • 働きマン
  • 重版未定

バクマンは高校生のコンビが漫画家としてジャンプで漫画家デビューをして、他の漫画家と熱い戦いを繰り広げるというストーリーです。

重版出来は、漫画編集部を舞台にして、漫画を仕事として関わっている人たちを描いたお仕事コミックです。さまざまなドラマが繰り広げられていき、漫画や出版業界の実態を知るのにも役立ちます。

働きマンは週刊現代の編集部をモチーフとした作品です。週刊誌の編集部を舞台としてリアルな職場の様子を垣間見ることができます。

重版未定は中小出版社を舞台にして、編集者の主人公が奮闘する様子が描かれます。日本の出版社の大半は中小出版社のため、出版業界のリアルな姿がわかる作品です。

まとめ

出版業界は漫画の売れ行きが好調であり、今後も漫画が出版業界を支えていくことが期待されています。特に電子書籍の売上が伸びており、クロスメディアやスマホアプリなどさまざまな方法により今後も売上を伸ばしていくでしょう。